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〒019-0803
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川字堤31-2
まるごと自然館
TEL:0182-47-2362

東成瀬の昔っ子

ぶっかけ椀

 昔あるところの長者殿のえ(家)さ、
三人の息子がえだんだど。太郎と次郎
と三郎といだけど。
 
 ある時、長者が息子だどご呼んで、
「オメだ、三年のうち働いて一番金をも
うげで来たおのさ、あど継がせる、なん
とだ」
て言ったど。
三人は、それぞれに働きに出たけど。

 太郎はある山奥の百姓のえ(家)さ行
ったけど。ほしたば、そこの親がだが、
犬の皮のケラコを渡して、
「これが切れるまで はだらいでけろ」
ていったけど。

 なんぼ働いでも、犬の皮のケラコは切
れねぇし、家に帰る日が近づいて来たし
、困ってしまったけど。石の上さねまっ
て、太郎は考えで空を見でだけど。
 そしたば、木の上でカラスが
「岩すれ、太郎、太郎、岩すれ!」
て、鳴いだけど。
ちょいと後ろ見たば、すべりあんべぁえ
ぇ岩っこあったけど。ケラコをしいて、岩
の上さあがってはすべり、あがってはす
べりして、半日すべったば、ケラコぁ切
れだけど。
 
太郎は親方にいって
「親方、ケラコ切れだし、三年えだし、ひま けでけろ」
て言って、
親方、何がけるがど思って、まじでだば
「何もけるものねふて、おら家の たがら
おの ける」
て言って持って来たおの、大っきたブッ
カケ椀だけど。
んだども、しかだにゃぐ貰って戻ったけど。
あんまりごしゃげで、親方のえさ向げで
、バェーンとぶっとばしたけど。
 太郎が歩いでったば、その椀コァ ゴロ
ゴロど太郎をぼっかけで来て
「太郎、オレどご 連れでえご、連れでえ
ったって損させねぇ!」
て言うなで、なんじぉ しかだねぇぐ、拾っ
てフトゴロさ しぇで家さ帰ったけど。
 
 そしてな、えさ 帰ったば、え では 次
郎と三郎ど、いっぺぁ働いで来て、祝い
こど してだけど。ほして、次郎の かが
ど わらし ど、三郎の かが ど わらし
ど お膳こさ座って ごっつぉ くてだけど。
 そのじぎ、太郎の かが ど わらし は
みんじゃのしまこで、にぎりまま くてだけ
ど。
 そごさ、太郎が入ったば、
「おお 難儀したべ、まず、おらどて、まま こぉ」
と言ったけど。
 
 ほして、太郎が まま くてだば、そごさ
オジジが来て、
「太郎なんだ、んが来てだながぁ、なに
商売してるな」
と、言ったけど。
太郎が困ってだば、フトゴロのわんこが、
「ぬすびど してだなだ、って言え!」
って言ったけど。
それで太郎は、
「ぬす人してえだ」
と、言ったけど。したば、
「ほう、ぬす人?んだば、ばげな、おら
えさ、馬盗みにこえ。へば、その馬ける
!」
て、言ったけど。

 ひとねむりしてえだば、わんこぁ、
「太郎、えご、太郎」と言ったけど。
それで、出がげで行ってみだば、川の
あるえで、橋をはずしてえだけど。
 それで、わんこぁ、
「おれどご、川の向こうさ投げろ!」
て言ったけど。
この時だど思って、ぶっかけ椀こボエー
ンと投げだば、わんこぁ、ヤッサ、ヤッ
サと橋かげだけど。ほして
「太郎、来え」って言ったなで、太郎はわ
だって行ったけど。
 行ってみだば、塀さ、カギかがってえ
で、入って行がれねけど。
 そこでまだ、わんこぁ、
「おれどご、塀の中さ、べぁべぁんと投げ

ろ」
って言ったけど。言うごど聞いて投げだ
けど。したば、
「ギギーギギー!」と戸が開いだなで、
中さ入って行ったど。

 そして まやさ 行って見だば、 馬の上
さ載って、二人して 両わぎさ えで手綱し
めえで 寝でだけど。
 そしたば、わんこぁ
「太郎、小屋さ えって、米三俵持ってこ
え」
って言ったけど。
「もう二俵、持ってこえ」
って、まだ言ったけど。
そして、馬さ乗ってだ人を、三俵積んだ上さ縄で
つなえで、手綱しまがへだけど。

 次に みんじゃ の 入り口の かまど あ
るどごさ えったば、火吹き竹持って寝で
だ人ぁ えだけど。
そのとき、わんこぁ
「尺八ど、火吹き竹、取り替えで持だせ
ろ」
って言うなで、太郎ぁ取り替えだけど。

 こんだあ
「とど ど かが なの 寝どごさえって、着
物の袖ど袖どつなげ」
って言ったけど。
「髪ど髪もつなげ、ぎっちりつなげ」
って言ったけど。
つないだら、こんだあ
「オジジー 馬 貰ってえぐぞー」
って言ったど。
そしたば、オジジが
「なえでがー!」
って言って起ぎだば、かがなの髪ひっぱ
れで、
「いでてば、とど よ!」
「いでたば、あば よ!」
って言って二人で引っぱり合いしてるう
ぢに、髪とげだけど。して、着るおの着
るべどて、とどぁ先に着たば、かがが
「なんだて、人の着るおの 着て!」
って言って、かがが着たば、とどが でで
っと裸になって、とどが着れば、かがが
ででっと裸になったけど。
 
 そしてるうぢ、袖がとげで、オジジが
「ヨジジ、ヨジジ 火おごせ!」
って言ったば、
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
て、尺八吹いだけど。
「尺八でねぇぐ、火おごせ!」
て言ったば、まだ
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
って、尺八吹いだけど。
 
 こんだ、まやさ 行って
「馬の番してだが!」
て聞いたば
「ちゃんと、ちゃんと」
って言って
「手綱しめでだが!」
て きいだば
「ちゃんとちゃんと」
て言ったけど。
オジジは
「ついに 太郎にやられだ!」
て言ったけど。

 太郎はその馬を元に商売をはじめで
、大もうげして、かがど、わらしどさ楽さ
せで、幸せに暮らしたんだど。

      とっぴんぱらりのぷー
   昔あるところの長者の家に、太郎と
次郎と三郎という三人の息子たちがい
ました。
 
 ある時、長者が息子たちを呼んで
「お前たち、三年間よそで働いて、一番
お金を儲けてきた者にこの家の跡を継
がせようと思うが、どういだろう」
と言いました。
三人はそれぞれに働きに出かけました


 太郎は、ある山奥の百姓の家に行き
ました。そうしたら、そこの親方が、犬の
皮のケラ(背中あて)を渡して、
「これが切れるまで、働いてほしい」
と言いました。

 いくら働いても、犬の皮のケラは切れ
ませんでした。そのうち家に帰る日が近
づいてきたので、困ってしまい石の上に
座って考えながら空を見ていました。
すると、木の上でカラスが、
「岩でこすれ、太郎。岩でこすれ」
と鳴きました。
チョッと後ろを見たら、すべり具合のい
い岩がありました。ケラをしいて、岩の
上に上がっては滑り、上がってはすべり
したら、半日でケラが切れました。

太郎は親方の所に行って
「親方、ケラが切れたし、三年いたし、」
おいとまさせて下さい」
と言いました。
親方が何かくれるかと思って、待ってい
たら
「何もやる物が無いので、私の家の宝
物をやろう」
と言って持ってきたのは、大きな欠けた
お椀でした。
仕方がないので、貰って戻ったけれど、
あんまり腹がたったので親方の家に向
けてぶん投げました。
太郎が歩いていくと、そのお椀がゴロゴ
ロと追いかけて来て
「太郎さん、おいらを連れていって下さ
い。連れていってくれたら損はさせませ
んから」
と言うので、しかたなく拾ってふところに
入れて、家に帰りました。

そうして家に帰ったら、家では次郎と三
郎がたくさん稼いで来て、お祝いをして
いました。
そして、次郎の奥さんと子どもと、三郎
の奥さんと子どもがお膳の前に座って、
ごちそうを食べていました。
その時、太郎の奥さんと子どもは、台所
の隅で、握り飯を食べてたそうです。
そこに太郎が入ったら、
「たいそう難儀したでしょう、とりあえず、
私達と一緒にご飯を食べましょう」
と言いました。

そして、太郎がご飯を食べていると、伯
父さんが来て
「太郎よ、お前帰っていたのか、どんな
仕事をしているんだ」
と言われて、太郎が困っていると、ふと
ころのお椀が
「盗人をしているんだ、って言って!」
と言いました。
それで太郎は、
「盗人をしているんだ」
と言いました。すると、
「ほう、盗人?それなら、今夜おれの家
に馬を盗みにきてみろ。うまく盗めたら
、その馬をくれてやるから」
と言いました。

一眠りしていたら、そのお椀が
「太郎さん行こう、太郎さん」
出かけていったら、川向こうの家で、そ
こに行く橋がはずしてありました。
それで、お椀は
「おいらを川の向こうに投げて下さい」
と言いました。
この時とばかり、欠けたお椀を向こう岸
に投げました。お椀はヤッサヤッサと橋を架けて、
「太郎さん、来て下さい」
と言うので、渡って行きました。
行ってみると、家の周りの塀に、カギが
掛かっていて入れません。
そこでお椀は
「おいらを、塀の中に(勢いよく)投げて
下さい」
と言うので、言うことを聞いて投げたら、
(お椀が戸を開けて)
「ギギーギギー」と開いたので、中に入り
ました。

そして、馬屋に入って見たら、馬の上に
一人乗って、二人は馬の両脇で手綱を
つかまえて寝ていました。
そしたら、お椀が
「太郎さん、小屋に行って米を三俵持っ
て来て下さい」
と言いました。そして
「もう二俵、持ってきて」
と又言いました。
そして、馬に乗っていた人を、米を三俵
積んだ上につないで、両脇の人を一俵
づつにつないで、手綱を捕まえさせまし
た。

次に、台所の入り口のかまどにいった
ら、火吹き竹を持って寝ている人がいて
いました。
お椀が
「尺八と火吹き竹を、取り替えて持たせ
てください」
と言うので、太郎は取り替えました。

今度は
「父さんと母さんの寝室に行って、着物
の袖と袖をつないで下さい」
と言いました。
「髪と髪もつないで、かたく」
と言いました。
太郎がつないだら、今度は
「伯父さーん、馬をもらっていきますよ」
と言いました。
すると、伯父さんが
「なんだってー!」
と言って飛び起きたら、母さんの髪がぴ
っぱられて
「痛いよ、父さんよ」
「痛いよ、母さんや」
と、二人で引っぱり合いするうちに、髪
がほどけました。とりあえず、着物を着
ようとして、父さんが先に着たら、母さん

「どうして、私の着てるものを着るんだ」
と、母さんが着ると、父さんがすっかり
裸になって、父さんが着ると、母さんが
すっかり裸になるのでした。

そのうちに、袖がとけた伯父さんは
「ヨジジ、ヨジジ、火をおこすんだ!」
と言うと、
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
と、その人が尺八を吹いたのです。
「尺八じゃなく、火をおこして!」
と言っても、また
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
と尺八の音です。

今度は、馬屋に行って
「馬を見張っていたか!」
と聞くと、
「ちゃんと、ちゃんと見張ってました」
と、三俵の米の上で言うし
「手綱をつかまえていたか!」
と聞くと、
「ちゃんと、ちゃんと見張ってました」
と、一俵ずつの米の横で手綱を持って、
言いました。
伯父さんは
「とうとう、太郎に馬を盗まれた!」
と、言ったそうです。

太郎は、その馬を元にして商売を始め
て、大もうけして、奥さんと子どもにつら
い思いをさせないで、幸せに暮らしまし
たと。

とっぴんぱらりのぷー


備前ムツさん

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