東成瀬の昔っこ
へっぴり嫁
| 昔々あるどごろに 爺様と婆様がえだっけど。 そごの家さ、一人息子が えでな、 嫁っこ もらうごどになったけど。 ツヅラの上さ シマの風呂敷づづみをしょった 働きそうな嫁様が来たけど。 爺様も婆様も 大喜びだったど。 それから一週間もした頃、嫁っこなんだが 元気がなぐなって、青いつらして、苦しそうな つらになったけど。 婆様しんぺぇして 「これこれ姉、どっか、わりが」 と、聞いたら 「どっごもなんてもねぇのも、屁ぇでるな がまんしてだぁ」 って、言ったけど。そしたば婆様、 「屁なんぞ、気にしねぇでまげれ」 って、言ったけど。 「んだたて、まげれば大変なごどになる」 「屁 たれだぐれぇで、大変な事などねぇ。 遠慮しねぇで まげれ」 って、言ったけど。 嫁っこも何日も我慢しでだもんだがら 「んだら、遠慮しねぇで、まげらせでもらう。 爺様と婆様、あでぎぶぢさ じったり しめぇででけろ」 と言ったけど。 屁たれたぐらいで、あでぎぶぢさ しめぇでろ、なんて 言うもんだがら、爺様と婆様、不思議に思って しまえでだば、 嫁っこ 今までがまんしてた屁おもいっきりやぶれで、 「「ビビビービ ビビビービッ」ど、ぶっぱなしたけど。 そしたば、家の中さ地震でも おぎだように、 ユサユサゆれで あでぎぶぢさ しまえでだ 爺様ど婆様ど ハッポまでぶっとばされで ギダッと しかがたけど。 嫁っこ 腹の中の屁が みな出てスキッとして、 ええ気持ちになってだば、ハッポで 「助けでけろ、助けでけろ」 って さがぶもんだがら、外にいた息子ぁ急いで助けだけど。 あんまり おっかねぇ目にあった爺様と婆様は、 嫁っこ 屁たれるたんびに、こんたに おっかねぇ思い するごたば、とでも でげねぇどて 「姉こ、まじ 家さ帰ってけれ」 と言い、嫁っこどごさ 暇っこだしたけど。 嫁っこは、とでも屁たれねぇでなば、暮らして えがれねぇっていうなで、なんじも しがだねぇぐ、 ツヅラとシマの風呂敷づつみをしょっかげで 家さ帰っていったけど。 村はずれまで行ったば、大きな栗の木の下さ、 村のわげぇ者だいっぱい集まって、思案しながら 上を見でだけど。 そごさ、嫁っこぁ通りがかって、 「おめだぢ、何やってだなだ」 と、聞いだけど。したば、わげ者だぁ、 「この栗の実おどしでぇのも、木ぁあんまり大きくて、な んとして落どしてええが考えでだどごろだ」 と、言ったけど。したば屁たれ嫁こぁ、 「こんたおのぁ、わげねぇべ、おめだぁ、まじ しゃげれ」 と、言って、ツヅラと風呂敷づつみをおろして、 栗の木さけっつおしけで、ビビ・・ビ ビビビーと、 屁たれだけど。 そうしたば、大きな栗の木さ大風ぁ(おおかぜ)来た みでに ゆらゆら揺れで栗こぁボダボダと地面しゃ みな めぇねぐなるころ落ぢだけど。 わげ者だ、喜んで、嫁こどさ、栗の実えっぺぇ けだけど。 えっぺぇ栗っこもらった嫁こは実家さ帰ってきたけど。 その話を聞いだ爺様ど婆様は、屁ったれ嫁こどご、 なんとが戻ってきてけれと頼んだど。 そして迎えに行ってつれできたけど。 それがらは、屁ったれ嫁こはあっちこっちがら 頼まれで屁をビビビッとたれでは、ほうびをたくさん もらって来たど。 おかげで、屁ったれ嫁この家ぁ親方衆になったけど。 とっぴんぱらりのぷー |
昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがいました。 その家に一人息子がいて、お嫁さんをもらうことに なりました。 ツヅラ(衣服を入れる、蔓で編んだ籠)の上に 縞の風呂敷包みをのせて背負った、働き者そうな 嫁さんが来たので、二人とも大喜びでした。 一週間もした頃、嫁さんがなんだか元気が 無くなって、青くて苦しそうな顔になりました。 お婆さんが心配して 「これこれ姉(アネ)さん(若い女・嫁の称)、 どこか具合が悪いのかい」 と聞いたら 「どこもなんともないけど、屁が出るの を我慢しています」 と言いました。すると、お婆さんは 「屁なんて、気にしないですればいい」 と言いました。 「だけど、すれば大変な事になるんです」 「屁をしたぐらいで、大変な事などないよ。 遠慮しないでしなさい」 と言いました。 嫁さんは、何日も我慢していたものだから 「だったら、遠慮しないでさせてもらいます。 お爺さんとお婆さん、囲炉裏の木の縁にしっかり つかまっていて下さい」 と言いました。 屁をするぐらいで、当て木縁につかまれなんて 言うから、二人は不思議に思ってつかまったら、 嫁さんは今まで我慢していた屁をおもいっきり 「ビビビー ビッ」と、勢いよくしました。 そうしたら、家の中に地震でも起きたように ユサユサと揺れて、当て木縁につかまっていた お爺さんとお婆さんは、茅葺き屋根の上にある 煙出しまでぶっ飛ばされてギダッと引っかかりました。 嫁さんが、おなかの仲の屁がみんな出たので すっきりして、いい気持ちなっていたら、煙出しで 「助けてくれ、助けて」 と叫んでいるから、外にいた息子が急いで助けに きました。 あまりこわい目にあったお爺さんとお婆さんは、 嫁さんが屁をする度に、こんなにこわい思いを するなんて、とても我慢できないと 「姉(アネ)さん、まず実家に帰っておくれ」 言い、嫁さんに暇を出しました。 嫁さんは、屁をしないでは、とても暮らしては 行かれないというので、どうにも仕方なく、 ツヅラと縞の風呂敷包みを背負って、 実家に帰っていきました。 村はずれまで行ったら、大きな栗の木の下に、 村の若者がいっぱい集まって、思案しながら 上を見ていました。 そこに嫁さんが通りかかって 「あなたたち、何をしてるんですか」 と聞きました。そしたら、若者達は 「この栗の実を落としたいけど、木があまり大きいの で、どうして落としたらいいか、考えているところです」 と、言いました。そしたら、屁ったれ嫁さんは 「こんなもの、わけないでしょう。あなたたち、 まず、どきなさい」 と、言って、ツヅラと風呂敷包みを下ろして、 栗の木にお尻を押しつけて、ビビビーッと 屁をしました。 そうしたら、大きな栗の木に大風が吹いたように ゆらゆら揺れて、栗がボタボタと地面が見えなくなる ほど落ちました。 若者たちは、喜んで、嫁さんに栗の実をたくさん あげました。 たくさん栗をもらった嫁さんは、実家に帰ってきました。 その話しを聞いたお爺さんとお婆さんは、屁ったれ 嫁さんのことをなんとか戻ってきてくださいと 頼みました。 そして、迎えに行って連れてきました。 それからは、屁ったれ嫁さんは、あっちこっちから 頼まれて、ビビビッと屁をしては、褒美をたくさん 貰ってきました。 おかげで、屁ったれ嫁さんの家は、お金持ちになりまし た。 とっぴんぱらりのぷー |

藤原晴子さん
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