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〒019-0803
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川字堤31-2
まるごと自然館
TEL:0182-47-2362

◎ 東成瀬の昔っこ

へっぴり嫁

昔々あるどごろに 爺様と婆様がえだ
っけど。
そごの家さ、一人息子が えでな、
嫁っこ もらうごどになったけど。
ツヅラの上さ シマの風呂敷づづみをし
ょった 働きそうな嫁様が来たけど。
爺様も婆様も 大喜びだったど。

それから一週間もした頃、嫁っこなんだ
が元気がなぐなって、青いつらして、苦
しそうなつらになったけど。

婆様しんぺぇして
「これこれ姉、どっか、わりが」
と、聞いたら
「どっごもなんてもねぇのも、屁ぇでるな
がまんしてだぁ」
って、言ったけど。そしたば婆様、
「屁なんぞ、気にしねぇでまげれ」
って、言ったけど。
「んだたて、まげれば大変なごどになる

「屁 たれだぐれぇで、大変な事などね
ぇ。遠慮しねぇで まげれ」
って、言ったけど。
嫁っこも何日も我慢しでだもんだがら
「んだら、遠慮しねぇで、まげらせでもら
う。爺様と婆様、あでぎぶぢさ じったり
 しめぇででけろ」
と言ったけど。
 
屁たれたぐらいで、あでぎぶぢさ しめぇ
でろ、なんて 言うもんだがら、爺様と婆
様、不思議に思って しまえでだば、
嫁っこ 今までがまんしてた屁おもいっ
きりやぶれで、
「「ビビビービ ビビビービッ」ど、ぶっぱ
なしたけど。

そしたば、家の中さ地震でも おぎだよ
うに、ユサユサゆれで あでぎぶぢさ し
まえでだ爺様ど婆様ど ハッポまでぶっ
とばされで ギダッと しかがたけど。
嫁っこ 腹の中の屁が みな出てスキッ
として、ええ気持ちになってだば、ハッポ

「助けでけろ、助けでけろ」
って さがぶもんだがら、外にいた息子
ぁ急いで助けだけど。

あんまり おっかねぇ目にあった爺様と
婆様は、嫁っこ 屁たれるたんびに、こ
んたに おっかねぇ思いするごたば、と
でも でげねぇどて
「姉こ、まじ 家さ帰ってけれ」
と言って、嫁っこどごさ 暇っこだしたけ
ど。
 
嫁っこは、とでも屁たれねぇでなば、暮
らして えがれねぇっていうなで、なんじ
も しがだねぇぐ、ツヅラとシマの風呂
敷づつみをしょっかげで 家さ帰ってい
ったけど。
 
村はずれまで行ったば、大きな栗の木
の下さ、村のわげぇ者だいっぱい集ま
て、思案しながら上を見でだけど。
 
そごさ、嫁っこぁ通りがかって、
「おめだぢ、何やってだなだ」
と、聞いだけど。したば、わげ者だぁ、
「この栗の実おどしでぇのも、木ぁあんま
り大きくて、なんとして落どしてええが考
えでだどごろだ」
と、言ったけど。
したば屁たれ嫁こぁ、
「こんたおのぁ、わげねぇべ、おめだぁ、
まじ しゃげれ」
と、言って、ツヅラと風呂敷づつみをお
ろして、栗の木さけっつおしけで、ビビ・・ビ ビビビーと、屁たれだけど。
 
そうしたば、大きな栗の木さ大風ぁ(お
おかぜ)来たみでに ゆらゆら揺れで栗
こぁボダボダと地面しゃ みな めぇねぐ
なるころ落ぢだけど。
わげ者だ、喜んで、嫁こどさ、栗の実え
っぺぇけだけど。
えっぺぇ栗っこもらった嫁こは実家さ帰
ってきたけど。
 
その話を聞いだ爺様ど婆様は、屁った
れ嫁こどご、なんとが戻ってきてけれと
頼んだど。
そして迎えに行ってつれできたけど。
 
それがらは、屁ったれ嫁こはあっちこっ
ちがら頼まれで屁をビビビッとたれでは
、ほうびをたくさんもらって来たど。
おかげで、屁ったれ嫁この家ぁ親方衆
になったけど。
 
       とっぴんぱらりのぷー
   昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがいました。
その家に一人息子がいて、お嫁さんをもらうことになりました。
ツヅラ(衣服を入れる、蔓で編んだ籠)の上に縞の風呂敷包みをのせて背負った、働き者そうな嫁さんが来たので、二人とも大喜びでした。
 
一週間もした頃、嫁さんがなんだか元気が無くなって、青くて苦しそうな顔になりました。

お婆さんが心配して
「これこれ姉(アネ)さん(若い女・嫁の称)、どこか具合が悪いのかい」
と聞いたら
「どこもなんともないけど、屁が出るの
を我慢しています」
と言いました。すると、お婆さんは
「屁なんて、気にしないですればいい」
と言いました。
「だけど、すれば大変な事になるんです」
「屁をしたぐらいで、大変な事などないよ。遠慮しないでしなさい」
と言いました。
嫁さんは、何日も我慢していたものだから
「だったら、遠慮しないでさせてもらいます。お爺さんとお婆さん、囲炉裏の木の縁にしっかりつかまっていて下さい」
と言いました。

屁をするぐらいで、当て木縁につかまれなんて言うから、二人は不思議に思ってつかまったら、嫁さんは今まで我慢していた屁をおもいっきり「ビビビー ビッ」と、勢いよくしました。

そうしたら、家の中に地震でも起きたようにユサユサと揺れて、当て木縁につかまっていたお爺さんとお婆さんは、茅葺き屋根の上にある煙出しまでぶっ飛ばされてギダッと引っかかりました。
嫁さんが、おなかの仲の屁がみんな出たのですっきりして、いい気持ちなっていたら、煙出しで
「助けてくれ、助けて」
と叫んでいるから、外にいた息子が急いで助けにきました。

あまりこわい目にあったお爺さんとお婆さんは、嫁さんが屁をする度に、こんなにこわい思いをするなんて、とても我慢できないと
「姉(アネ)さん、まず実家に帰っておくれ」
言い、嫁さんに暇を出しました。

嫁さんは、屁をしないでは、とても暮らしては行かれないというので、どうにも仕方なく、ツヅラと縞の風呂敷包みを背負って、実家に帰っていきました。

村はずれまで行ったら、大きな栗の木の下に、村の若者がいっぱい集まって、思案しながら上を見ていました。

そこに嫁さんが通りかかって
「あなたたち、何をしてるんですか」
と聞きました。そしたら、若者達は
「この栗の実を落としたいけど、木があまり大きいので、どうして落としたらいいか、考えているところです」
と、言いました。
そしたら、屁ったれ嫁さんは
「こんなもの、わけないでしょう。あなたたち、まず、どきなさい」
と、言って、ツヅラと風呂敷包みを下ろして、栗の木にお尻を押しつけて、ビビビーッと屁をしました。
 
そうしたら、大きな栗の木に大風が吹いたようにゆらゆら揺れて、栗がボタボタと地面が見えなくなるほど落ちました。
若者たちは、喜んで、嫁さんに栗の実をたくさんあげました。
たくさん栗をもらった嫁さんは、実家に帰ってきました。
 
その話しを聞いたお爺さんとお婆さんは、屁ったれ嫁さんのことをなんとか戻ってきてくださいと頼みました。
そして、迎えに行って連れてきました。
 
それからは、屁ったれ嫁さんは、あっちこっちから頼まれて、ビビビッと屁をしては、褒美をたくさん貰ってきました。
おかげで、屁ったれ嫁さんの家は、お金持ちになりまし
た。

       とっぴんぱらりのぷー

藤原晴子さん

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