四人の地獄回(めぐ)り
昔々、ある村に鍛冶屋さんがいだん だど。 その鍛冶屋さんが、病が元で死んで しまったんだど。死んでしまったがら、え んま様の所さ、さばきを受けに行がね ばだめで、あの世への道を一人トボ トボと歩いていだんだど。 したば、向こうの方で「おーい、おー い」って叫ぶ声するがら、ひょいっと見 だば、今死んだばっかりの軽業師が、 そっちの方がら歩いてきたけど。 「あぁ、えがったなぁ、一人より二人の ほうが心強え。まぁ、一緒に行ぐべ」 と言って、カヤカヤしゃべりながら、あ の世への道、歩いていったんだど。した っきゃ、もう少し行ったば、今度は二人 連れ、あっちの方がら来たんだど。 「あ、おめだも、あの世さ行ぐなだが。 一緒に行くべ」 一人より二人、二人より三人、四人な ばもっと心強え。ワイワイ、ガヤガヤ、 えんま様の方に歩いていったんだど。 さて、いよいよえんま様の所さ着い だ。鬼コだちに、ピシッてやられで、えん ま様の前さ、ひれふしたけど。 「えんま様、えんま様、おらなば、シャ バでなーんもわり事してこねがら、なん とが極楽さ やってけれ。お願いだ」 「待で待で、すぐには極楽さ やられ ね。今よ、善悪の鏡ってゆうなで、オメ だぢがシャバでどんな事をして来だが、 まず見でがらだ。この鏡はな、えーごど した事も、わりごどした事も、みーんなう つるなだ。えぐ、見でれ」 大っきい鏡で、四人見だば、したっ きゃ、その鏡さ映った四人、どーれも ろくだごどしてね。 「あー、だめだだめだ。皆あれだげシ ャバでろくでね事したがら、 地獄行き!」 って、四人とも鬼コに連れられて、 地獄まで行ったけど。 地獄さ着いだば、一番目は針の山 だっけど。あー、ジガジガでぇ針の山、 いっぺぇあるけど。 「なんじするべぇ」 そごで、鍛冶屋さん、たぢまぢのうぢ、 金のわらじ作ったけど。そのわらじ、軽 業師履いたんだど。軽業師だがらお手 の物、三人をヒョイッと肩さ乗せて、針 の山をチョチョチョッと登って、チャーッ と降りできだんだど。 さぁー、それを見でだえんま様、 ごしゃだど。 「なーんと、ろぐでね!この者ども皆、 釜ゆでだ!」 さあ、まだ鬼コに連れられでったば、 大ーっきい釜さ、グラグラグラど湯ッコ 煮立ってたんだど。あぁ、なんじするべ って思ったば、なんと、せぇーので投げ られだとたん、山伏が 「お湯よ、水になれッ!」て、 きとうしたんだど。 したっきゃ、四人入ったころには、 もう釜の湯ッコ、水になってらけど。 「ああ、水コになってしまってら。もう びゃっこ火たけ!ああ、おもしれな」 なって言ったり、唄ったり、水浴び したり、もう、騒いだんだど。 したっけ、それを見でだえんま様、 もっともっとごしゃで、 「もう、これはダメだ!鬼ども、皆喰っ てしまえ!」 そう、ゆったんだど。 「さあ、こんだ、鬼にかれられる、 なんじするべっ」 と思ってると、鬼コ大っきい口開けて 「ああーん」てやろうとした時に、歯医者 さん、ガリガリガリって、鬼の歯全部 抜いでしまったけど。んだがら、四人 ともひとっつもけがしねで、鬼の腹さ ペロペロなんてスルーッと入ってしまっ たけど。 んだのもしゃ、鬼の腹の中って、 真っ暗でしゃ手探りでえだど。 「困ったな、あ、えものある」 ってゆって、提灯コめけで、ローソクさ 火コつけで、それ鬼のあばら骨さ、かげ だけど。したっけ、周りホーンと明るぐな ったど。 ようーぐよぐ鬼の腹の中見だばよ、 なんと、あっちさ すじコペチ、こっちさ ペチ、こっちさ肉コタプタプあるけど。 んで、四人してかわるがわる、すじコ、 ペッとひっぱてみだ。 そしたば、鬼コひっぱられるたんびに 、泣げできたり、笑えできたり、痛でがっ たり。こんどぁ肉コ丸められれば、こちょ がしくて、なんどもでんぐり返りしたり、 鬼コせじねがって、どうしようもねくて、 えんま様の前さえって「ハアッ」って、 みんな吐き出してしまったけど。 さあ、これを見だえんま様、 「あ〜あ、これはもうオレの手におえ ね。よし、おまえ共はまだこごさ来るな 早がら、もう一回シャバさ、戻れ!」 って、命令したっけど。 それで、四人とも、また生き返って、 楽しく暮らしたとさ。
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昔々、ある村に鍛冶屋さんがいまし た。 その鍛冶屋さんが、病が元で死んで しまいました。死んでしまったからには、 閻魔様の所に、裁きを受けにいかなけ ればなりません。あの世に続く道を一人 トボトボと歩いていきました。 すると、向こうから「オーイ、オーイ」 と叫ぶ声がするので、ヒョイッと見たら、 今死んだばかりの軽業師が歩いてきま した。 「あぁ、よかったなあ、一人より二人の ほうが心強い。まあ、一緒に行こう」 そう言って話しながら、あの世への 道を歩いて行きま した。すると少し進んだら、今度は 二人連れがあっちの方から来ました。 「あ、あんたたちもあの世に行くのか。 一緒に行こう」 一人より二人、二人より三人、四人だ ったらもっと心強い。ワイワイ、ガヤ ガヤ言いながら閻魔様の方に歩いて いきました。 さて、いよいよ閻魔様の所に着きま した。鬼たちにピシッとやられて、閻魔 様の前にひれふしました。 「閻魔様、閻魔様。私は現世でなにも 悪いことはしてこなかったから、なんと か極楽にやってください。お願いします」 「待て待て、すぐに極楽にはやられな い。今、善悪の鏡というもので、お前達 が現世でどんなことをやってきたか、ま ず見てからだ。この鏡は、いいことをし たか、悪いことをしたか、みんな映るの だ。よーく見ていろ」 そう言われて大きい鏡を四人で見たら 、その鏡に映った四人とも、みんなろく でもないことばかりしていました。 「ああ、これは駄目だ。皆あれほど現 世で悪いことをしたんだから、 地獄行きだ!」 そうして、四人は鬼に連れられて、 地獄まで行きました。 地獄に着いたら、一番目は「針の山 」がありました。トゲトゲの痛そうな針の 山が、たくさんありました。 「ああ、どうしよう」 すると、鍛冶屋さんがあっという間に 金のわらじを作りました。そのわらじを 軽業師が履きました。軽業師にはお手 の物で、三人をヒョイッと肩に乗せて、 針の山を簡単に登って、サーッと降りて きました。 さあ、それを見ていた閻魔様は怒り ました。 「なんて、ろくでない奴らだ!この者共 はみんな釜ゆでの刑にしろ!」 またまた鬼に連れられて行った所 には、大きい釜にお湯がグラグラ煮え たぎっていました。ああ、今度こそどうな るんだろうと思ったら、なんと投げ込ま れる瞬間に、山伏が 「お湯よ、水になれ!」と、 呪文をとなえました。 すると、四人が落ちたときには、もう釜 のお湯は水になっていました。 「なあんだ、水になってしまったじゃな いか。おーい、もう少し火を燃やせ〜! ああ、おもしろいなぁ」 などと言ったり、唄を唄ったり、水浴び をしたり、大騒ぎでした。 すると、それを見ていた閻魔様は、 ますます怒って 「これは、けしからん!鬼ども、こいつ らをみんな喰ってしまえ!」 と、命令しました。 「さあ、今度は鬼に喰われてしまう、どうしよう」 と思ったら、鬼が大きな口を開けて食 べようとすると、歯医者が、ガリガリと鬼 の歯を全部抜いてしまいました。だから 、四人は怪我もしないで、スルスルと鬼 の腹に入ってしまいました。 けれど、鬼の腹の中は真っ暗で、手探りしていると 「困ったな。あっ、いい物がある」 と、提灯を見つけて、ロウソクに火を つけると、それを鬼のあばら骨に掛けま した。すると、周りがうっすらと明るくなり ました。 よくよく鬼の腹の中を見ると、あちらこ ちらに筋肉があったり、たっぷりの肉が あったりしました。 すると四人は、あちこち触り回って、そ の筋肉をひっぱったりしました。 すると鬼はひっぱられるたびに、泣け てきたり、笑えてきたり、痛くなったりし ました。肉を丸められるとくすぐったくて 、七転八倒して苦しんで、鬼はどうしよう もなくなって、閻魔様の前にいって、四 人を吐き出してしまいました。 さあ、これを見た閻魔様は、 「あ〜あ、これはもうオレの手におえな い。よし、おまえ共はまだここに来るの は早かったのだ。もう一度現世に還れ !」 と命令しました。 それで、四人は生き返って、楽しく暮ら しました。 トッピンパラリノプー |
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