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〒019-0803
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川字堤31-2
まるごと自然館
TEL:0182-47-2362

東成瀬の昔っ子

小川(こがわ)寺

 昔、あるどごろさ、大っきい山があっ
たけど。
 そごさは、長い長い峠道あったけど。
して、隣の村さ行ぐには、その峠越えで
、まる一日かがるけど。
 その山の麓さ、一軒の茶屋あったけ
ど。その峠をを越える時は、旅人はそ
の茶屋で腹ごしらえして行くんだど。ん
だがら、この茶屋は繁盛してだっけど。

 ある日、旅人が昼頃出かげだなで、
頂上さ着いだば、日が暮れで、真っ暗ぐ
なって向こうも見えねくて歩く事もでぎね
なで、大きな木の下で、一晩泊まるごと
にしたっけど。
 
 夜中の十二時過ぎだば、急に山鳴り
して山賊雨降ってきて、大雨なったけど
。どうしようもねなで、木の下さ、ぴった
りくっついでいだっけど。

 その雨があがったら、いい月夜になっ
たげど。したば、そごさ、ゆるりがら鬼コ
だいっぺ集まってきて、ノンノンと火炊い
だけど。
してみんなで
「小川〜、小川〜、小川〜」
て三回叫んだば、したば、きれいな娘ッ
コ出て来たっけど。

 したら、鬼コだぢ、
「おめえの親だち茶屋やってで、四足、
二足喰れねえ人達さ、四足、二足でた
れコ作って、うどんなの喰せでるがら、
そのバチで、おめどご火あぶりさかげ
ねえばでげね」
と言って娘を火あぶりかげるけど。
したば、そこの木の下で隠れで旅人、
可哀想だど見でだけど。

 夜、明げでがら、麓の茶屋さ下りでき
て、団子やらなにやらいっぺ買って、
「小川に上げ申す、小川に上げ申す」
って言って食ったなだけど。
 したば、茶屋の親方、
「小川ってな、おら家の娘だ。なしてそう
やって上げるなだ」
って聞いだけど。
 それで旅人は夕べ峠で見だごど話し

「それで、あまり可哀想で上げるなだ」
って言ったけど。
 したば、親方は
「んだば、おれもそごさ、行ってみで、連
れでてけろ」
て言ってたなで、旅人は親方を連れで
たけど。

 したばやっぱり、一晩泊まったどこさ
行って待ぢでらば、大雨風になって、ガ
ラッと晴れだば、鬼コだ集まって来たけ
ど。

 「小川・・小川・・小川・・」
って呼ばたけど。
 したば、その小川って娘、旅人がらも
らったごっそう、みんなさ配ったけど。そ
の日は火焙りかげねえで、鬼ッコだち
帰ってたけど。

 そしたら、茶屋の親方は、親のバヂを
子どもがかぶるとは、この事だど思って
、わえさ帰ってがら小川って言うお寺を
建てで祀ったけど。
それが今のフダラクさある「父母の恵の
深き小川寺」って伝えられでるなだど。

 あとはホンデネェーと言われでも、亡く
なったバッパから聞いだ話だがら、バッ
パさ聞ぐしかねぇー。


 とっぴんぱらりのぷう
   昔あるところに、大きい山がありまし
た。
 そこには長い長い峠道があって、隣
の村に行くには、その峠を越えて丸一
日かかりました。
 その山の麓に一軒の茶屋がありまし
た。峠を越える時は、旅人がその茶屋
で腹ごしらえしていくので、大変繁盛して
いました。

 ある日、旅人が昼過ぎに出かけたの
で、頂上に着いた頃には日が暮れて、
向こうも見えないくらい暗くなって、歩くこ
とができないので大きな木の下に泊ま
ることにしました。

 夜中十二時過ぎ、急に山鳴りがしてど
しゃぶりになりました。どうしようもない
ので、木の下にぴったりとくっついてい
ました。

 その雨があがったら、晴れて月夜にな
りました。するとそこに、周りから鬼達が
多勢集まってきて、ドンドンと火を燃やし
始めました。
 そうして、皆で
「小川(こがわ)〜、小川〜、小川〜」
と三回叫んだら、きれいな娘が出てきま
した。

 すると鬼達は
「お前の親たちは、茶屋を営んで、獣や
鳥を食べられない人々に、それでたれ
を作って、うどんなどを食べさせている
から、その罰で、おまえを火あぶりにか
けなければならない」
と言って、娘を火あぶりにかけました。
木の下で隠れていた旅人は、可哀想に
と思って見ていました。

 夜が明けてから、麓の茶屋に下りてき
た旅人は、団子やいろいろたくさん買っ

「小川(こがわ)にお供えします。小川(
こがわ)にお供えします」
と言ってから食べました。
 すると、そこの主人が
「小川(こがわ)というのは、亡くなったう
ちの娘だけれど。どうしてそうやって食
べるんですか」
と、尋ねました。
 それで、旅人は夕べ山の峠で見たこ
とを話して、
「それで、あまり可哀想なので、お供え
しているのです」
と言いました。
 すると主人は
「それは、私もそこに行ってみたい。連
れてって下さい」
と言うので、旅人は主人を連れて行きま
した。

 するとやっぱり、前に泊まったところで
待っていると、大嵐になって、カラッと晴
れたら、鬼達が集まってきました。
「小川〜小川〜小川〜」
と呼びました。
 その娘は旅人がお供えした御馳走を
、鬼達みんなに分けました。それで、そ
の日は火あぶりの刑にしないで、鬼た
ちは帰って行きました。

そうして、茶屋の主人は「親の罰を子が
かぶる」というのは、このことだと考えて
、自分の家に帰ってから、小川というお
寺を建てて祀りました。
それが、「ふだらく」にある「父母の恵の
深き小川寺」と言うのだそうです。

それは違うと言われても、亡くなったお
ばあさんから聞いた話だから、おばあさ
んに聞くしかありません。


とっぴんぱらりのぷう

福地タケ子さん

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