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〒019-0803
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川字堤31-2
まるごと自然館
TEL:0182-47-2362

東成瀬の昔っ子

栗駒山の伝説

 昔々、栗駒の村さ、善作と与作とい
う兄弟二人えだけど。 
 兄の善作まだ、生まれつき 頭がええ
して、商人やってだけど。
 弟の与作まだ、生まれつぎ人ばりえし
て働ぎ者で、あんまりおが人えして、み
んなにだまされでばりで、いっつもその
日その日の暮らしやっとだけど。
 兄の善作まだ右見でも左見でもジェン
コが入ってくるんだけど。それで、いっつ
もあちこちさ旅してありて、旅ってゆって
も、宮城の里から伊勢参りどが、四国
の金比羅宮参りどが、そういう長げ旅さ
行くんだけど。
 弟の与作は、どこさも行くもせねで、
毎日長沼のほとりさ草刈りにいっては、
ひとりで愚痴ばりこぼしていだけど。

 したばある日、草刈りしてだば沼がら
パタパタパタと波コ出だと思ったば、沼
の主の大蛇が、きれいなお姫様になっ
てちょこっと出はたけど。
「これこれ、与作とやら、おめも旅に出
でみでが」
「行ってみで」てゆたば、
「おめどこ、旅に行かせでやるがら、富
士の裾野の沼に妹がいるので、その妹
さ手紙を届けてほしい」
って言って、旅費と手紙を頼んで又沼さ
入ってたけど。
 旅さなの行ったごどのね与作は、小躍
りして喜んだけど。旅費と手紙を預かっ
て、喜び勇んで旅さ出だっけど。もども
ど字も読めねぇ与作は、その手紙さ何
書いでるのがさっぱり見当つがねがっ
たて、大事にしまって行ったけど。

  江戸を過ぎて、駿河の富士の裾野
まで行ったば、一人の坊さんが倒れで
いだっけど。人のええ与作は、これなば
そのままにして置がれねど思ってな、そ
れを何日も何日も看病して、旅費として
貰ったジェンコをでんでに皆使ってしま
ったけど。

 ハッと気がついた与作は、「あー、お
れ妹さ手紙届けねねなだっけな」って思
って、坊さんさ話したっけど。
したば、坊さんなよ
「どれどれ、その手紙、おれどごさ見せ
でみれ」
って言うから見でもらったば、
「この男はおれのすみかの草をみな刈
ってしまって、おれの正体を隠す所を無
くなってしまったから、この男を飲んでし
まってけれ」
ってそういうことを書いた手紙だっけど。

 和尚さん、びっくりしてしまって、
「ちょっと待で待で」ってビリビリって破い
でよ、
「この男はな、おれのためにいっつもほ
とりをきれいに片付けでくれで、おれに
尽くしてけるいい男だから、お前の持っ
てる宝の駒を一つやってけれ」
って書き直してけだっけど。
「さあ、これ持ってげ」って言ったけど。

 与作、富士の裾野の沼さ行って、
「栗駒の里がら来たあぁ」
って大きい声で言ったば、そこからおら
ほから出はったより、まだきれいな御姫
様が出てきたっけど。
そして
「これを栗駒の沼がら頼まれで来たの
だから」
って出したば、それをそのお姫様見て、
「ちょっと待ってれな」と言って、中さスス
ーって入っていったけど。

 そしてまもなく、きれいだ立派な栗毛の駒を連れて戻って来たっけど。
「これはな、お前はおらえの姉さ尽くして
くれだがら、この栗毛の駒を差し上げる
から、これからもおらえの姉さ尽くして孝
行してやってけれな。感謝してるがら」
そう、栗毛の駒を渡して、
「この馬はな、一合の米コ喰わせれば、
一升の金貨産むなだがら、んだがら大
事に可愛がってけれな」
そう言われて
「お姫様なば、馬コ馬なすぐれなば、お
れだてわがるのも、ジェンコなすなて、
あのお姫様なば、おれどご馬鹿にすお
だ」って思ったども、
そのはだか馬さ乗って一鞭バジッとあで
で、ターッと富士の山くだって行ったば、
あの時助けたお坊さんが
「与作ーッ、与作ーッ」
って手振って待ぢでらけど。
「悪いごと言わねがら、栗駒の里さ戻ら
ねで、宮城の山さ登れ」そう言ったけど

「わがった、わがった」って言ってな。

 その馬コ連れで、岩手のおじさんの家
さ、やっけなるごどになったけど。
 そごの家さ入ってな、暗くなって寝て、
誰もいねぐなってがら、一合の米コ喰わ
せだば、ゾロゾロゾローッて一升の金貨
なしたけど。
「あらー、これなばえごど」どて、まだ次
の日一合の米コやったば、まだ金貨ゾ
ロゾロゾローッてなしたけど。

 それやってらば、欲の深いおじさんが
、それ見でらけど。「あッ、おれ、あれ欲
しな」って思って、与作いねどご見計らっ
て、その馬コ盗んで、わ家さ、ちでたけ
ど。
「与作しゃ、一合の米喰わせで一升の
金貨だごたば、おれ一升の米喰わせる
」って喰わせだけど。
 さあ、その一升の米喰ったば、馬コム
リムリムリッど大ッきぐなって、家バリバ
リバリッてぼっこして、山さドンドンど駆
け上がっていって、大ーッきな岩になっ
たけど。
 したば、与作やぢねくてやぢねくて、そ
の岩見で、涙ボロボロこぼして、毎日泣
いで暮らしたけど。

 して、月日経ったば、その岩が大ーき
い山に変わったけど。そしたば、その山
、雪の降るじぎになったば、馬コ、今に
も空さ駆け上がるよに舞い上がるよに
前足たてて、雪コかぶって見えだけど。

与作の話コ聞いだ村の人だちよ、「ああ
、あれしゃ、与作どご助けだ馬コだ」と
思って、あれは欲の深け人間をいまし
めるための姿なんだって、そうゆって、
口々に伝えて、今の「栗駒山」って呼ぶ
ようになったんだど。

とっぴんぱらりのぷー
   昔々栗駒の村に、善作と与作という
二人の兄弟が居ました。
 兄の善作は生まれつき頭がよくて、商
人をしていました。
 弟の与作は、生まれつきお人好しで
働き者で、あまりもお人好しなもので、
皆にだまされてばかりで、いつもその日
その日を暮らすのがやっとでした。
 兄の善作はとっても裕福でした。だか
ら、いつも旅ばかりしていました。旅とい
っても、宮城からお伊勢参りとか、四国
の金比羅参りとか、長い旅ばかりでした。
 弟の与作は貧乏だからどこにも行け
ず、毎日近くの長沼のほとりに草刈りに
いっては、ひとりで愚痴ばかりこぼして
いました。

 ところがある朝、長沼のほとりで草を
刈っていると、パタパタと波が立って、
沼の主の大蛇がきれいなお姫様に化け
て出てきました。
「これこれ、与作とやら、お前も旅に行
きたいか」
「行ってみたいです」と言うと、
「おまえを旅にに行かせてやるから、富
士の裾野の沼に住んでいる妹に、この
手紙を届けてくれないか」
と言って、旅費と手紙を頼んで、又沼に
戻って行きました。
 どこにも行ったことがない与作は、小
躍りにて喜びました。旅費と手紙を預か
って、喜び勇んで旅に出ましたが、元々
字が読めないので、その手紙に何が書
いてあるか見当がつきませんでしたが、
大事にしまって出かけました。

 江戸を過ぎて、駿河の裾野まで行った
ら、一人のお坊さんが倒れていました。
お人好しの与作は、ほおっておけないと
思って、その人を何日も何日も看病して
、旅費として貰ったお金をすっかり使っ
てしまいました。

 ハッと思い出した与作は、「おれは、
妹さんに手紙を届けなければならなか
ったんだ」とお坊さんに話しました。
すると、お坊さんは
「どれどれ、その手紙を私に見せてみな
さい」
というので、見て貰うと
「この男は、おれの住んでいる沼の周り
の草を、みんな刈ってしまうので、正体
を隠す所が無くなってしまったから、飲
んで殺してくれ」
と書いてある手紙でした。

 和尚さんは驚いて
「少し待て」と言ってビリビリ破いて
「この男は、おれのためにいつも沼のほ
とりをきれいに片づけて、尽くしてくれる
いい男だから、お前の持っている宝の
馬を一頭やってくれ」
と、書き直してくれました。そして、
「さあ、これを持って行きなさい」と言い
ました。

 与作は、富士の裾野の沼に行って
「栗駒の里から来ましたあ」
と大きい声で言いました。するとそこか
ら自分の沼から出てきたよりもっと綺麗
なお姫様が出てきました。
そして「栗駒の沼のお姫様から、この手
紙を届けるように頼まれてきました」
と出したら、そのお姫様が読んで
「少し待ちなさい」と沼に中に入っていき
ました。

 そしてまもなく、綺麗な立派な栗毛の
馬を引いて戻ってきました。
「お前は私の姉に尽くしてくれたから、こ
の栗毛の馬を差し上げます。これから
も私の姉に孝行してください。感謝しま
すから」
そう言って、栗毛の馬を渡して
「この馬は、一合の米を食べさせれば、
一升の金貨を産むのだから、大事に可
愛がって下さい」
そう言われて
「このお姫様は、馬が馬を産むぐらいは
、おれだってわかるけど、お金を産むな
んて、おれを馬鹿にしてるな」と思った
けれど
その裸馬に乗って、一鞭当てて、富士
の山を下って行ったら、あの時助けた
お坊さんが
「与作ーッ、与作ーッ」
と、手を振って待っていました。
「悪いことは言わないから、栗駒の山に
は行かず、宮城の山に行きなさい」と言
ったので
「わかりました」と言って別れました。

 その馬を連れて、岩手のおじさんを訪
ねて、置いて貰うことなりました。
 そこの家で、暗くなってみんなが寝て
から、馬に一合の米を食べさせたら、ゾ
ロゾロゾローッと一升のお金を産みまし
た。
「おお、これはいいもんだ」と、また次の
日も一合の米を食べさせたら、又お金
を産みました。

 そうしていると、ある時欲の深いおじさ
んがそれを見ていました。「おお、あれ
が欲しいな」と、与作が居ないところを
見計らって、その馬を盗んで、自分の家
に連れていきました。
「与作が一合の米をやって、一升の金
ならば、おれは一升の米をやってみよう
」と食べさせました。
 するとさあ大変、その一升の米を食べ
た馬は、ムリムリッと大きくなって、バリ
バリッとその家を壊して、山にドンドン駆
け上がっていって、大きな岩になりまし
た。
 すると、与作は可哀想で可哀想で、そ
の岩を見上げて毎日泣いて暮らしまし
た。

 そして、月日が経ったら、その岩は大
きな山になりました。雪の降る季節にな
ると、今にも空に駆け上がるように前足
を蹴立てた栗毛の馬が見えるようにな
りました。

 与作の話を聞いた村人達は、「あれ
は、与作を助けた馬だ」と、欲の深い人
間を戒めるための姿だと言い伝えて、
今の「栗駒山」と呼ぶようになりました。


まず、 とっぴんぱらりのぷー

本間智佐子さん

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