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〒019-0803
秋田県雄勝郡東成瀬村椿川字堤31-2
まるごと自然館
TEL:0182-47-2362

東成瀬の昔っ子

能恵姫ものがたり

 昔、出羽の国の殿様は、岩崎兵庫
の守という人で、岩崎にお城があったな
だけど。

 ある年、このお城さ、めんこい玉のよ
うなおなごぼぼこ生まれだけど。殿様喜
んでよ、そのぼぼこさ「能恵」って名前つ
けだけど。なんと、皆してめんこがるも
んで、なんと皆して、でえめに育てるも
んで、能恵姫、うーんとええわらしに育
ったけど。

 大きぐなるにしたがって能恵姫、わら
しこの時がら、めんこがったのが、ます
ます美しくなって、いいお姫様になった
けど。能恵姫、ただ美しだげでなく、頭
えして、さかしがったごでな。なにやって
もずばぬげだ、すばらしいお姫様だけ
ど。

 大きぐなったある年、月のきれいな晩
に、能恵姫いつも弾いでる琵琶、弾い
だけど。そしたば、その琵琶さ合わせる
ように、どごからだが笛の音っこ聞ごえ
で きたんだけど。不思議なごどあるも
んだなぁと思ったば、次の日も、まだ次
の日も、能恵姫琵琶弾き出せば、それ
さ合わせるように、きれいだ笛の音が
聞こえて くるえなったけど。それで、能
恵姫こでられねぐなって、家来の上総
の介どさ、どこで誰吹いでるか、確かめ
できてけれって頼んだけど。

 上総の介、表さ出てたば、お城の大
手門の上さ、二十ばりの若げ侍が座っ
て、笛吹いでらなだけど。で、上総の介
がお姫様のどごさ連れでごうど思って、
その若 侍のそばさ行ったば、すーっと
いねぐなってしまったけど。これなば、ど
ごさえったおだべなって探したたって、
その若侍えねおだけど。

 そうしているうちに能恵姫十八になっ
て、ますます美しくなったけど。そえでな
、川連のお城さ、嫁こなるごとに決まっ
たけど。
その嫁入りの日、きれいだ立派だ駕籠
さ、能恵姫乗ってしゃ、お供の侍だちえ
っぺついで、お城出発したけど。その日
は朝まから、からっと晴れだええ天気で
、絶好の嫁入り日和だけど。


 その行列が栄が淵のあだりに着いだ
ば、あれぐれ良い天気だったなが、に
わがに暗ぐなってきたけっど。して、雷
鳴るんだが、稲妻光るんだが、雨降る
んだが、風吹 ぐんだか、もう、大嵐にな
ったんだけど。もう、家来だちは必死に
なって、能恵姫の駕籠守らねねくてがん
ばったけたって、ずるずるど駕籠まぢか
ら、川の底さ 引っ張られだなだけど。お
供の侍たちはなんじもせねで、それ見
でるしかねっけど。

 しばらく思ったば、雨風止んで、また
元のカラッと晴れだいい天気になったけ
ど。それがら、必死になって川見るんだ
が、藪コ見るんだが、草むら見るんだが
して、姫様どご、みんなして探したど。し
たて、なんぼ探したって、姫様えねおだ
けどよ。
なんとお仕方ね、お城さ戻って、殿様さ
それ報告したっけど。したば、殿様よ、
もうやちねがってやぢねがって、気狂う
べがていうだげ、悲しむっけど。

 毎日悲しむなで、家来の上総の介、
殿様どご見かねで、ある日一人で、姫
様いねぐなった栄が淵さ、探しに行った
けど。したば、その栄が淵のあたりから
、川底 がら人の話し声みでたな、聞こ
えできたんだけど。それで、覗こもうと思
ったたて、藪なんだが蔓なんだが邪魔
になって、覗こまれねけど。それでな、
差してだ 刀出して、払おうど思ったば、
ポロっと手から落ちて川さジャブーンど
落ぢでしまったけど。
さあ、困ってしまった上総の介は、その
刀取らねねどて、川さ潜ったけど。そし
て、川底へ行って見だば、奥の底のほ
うさ、岩屋あるなだけど。

 その岩屋の中さ立派だお座敷あって
な、その真ん中さ、能恵姫座ってえだっ
けど。見だば、大ーへび、能恵姫どご、
ぐるぐる巻きにして、わまだ頭、能恵姫
の膝さ、チョコンと乗せて、昼寝してらな
だけど。

 なんと、上総の介、どでんしてしまって、早ぐ逃げねねって思ったけのも、んだ
のも思い直して「ああ、姫様どこ、お城さ
連れ戻さねばできない」って思って、 「
行ご」って姫様の袂引っ張ったば、ビリ
って裂けでもげでしまったけど。んだっ
たて、姫様どこ連れて行きたくて「姫様、
お城さ戻ろ、お城さ戻ろ.」一生懸 命言
ったたて、姫様は「私はヘビど暮らすご
どになったなで、もうお城さ戻られねぐ
なってしまったなだ」そして、自分の頭か
ら、櫛とかんざしを取って、それ からも
げだ袖出して、上総の介どさ「これを両
親さ、私の形見だって、届けでけれ」っ
てやったけど。

 上総の介はな、泣く泣くお城さ戻って
きて、殿様さ、能恵姫の話して、その形
見の品殿様どごさやったけど。殿様は、
やぢねふてやぢねふて、んだのもな、「
能 恵姫どこ、なんぼでも苦しみから救
わねばでげねな」っていうなで、栄が淵
のほとりさ、お堂こ建てだけど。そして、
能恵姫どこ、奉ったけど。

 そして、形見の袖と櫛とかんざしは、
川連の殿様さ届げたっけど。したば、川
連の殿様は立派だお寺建てでけでよ、
形見の品を納めて、能恵姫の位牌こ作
って、そこさ納めて弔ってけだっけど。

 でな、何年か栄が淵で暮らした能恵姫
と蛇は、大倉村から、鉱山の毒が川さ
流れてくるなで、そごさ住んでられなくな
ったけど。

 それで、上さ上さ上って行って、小安
の不動滝さたどり着いだっけど。そごさ
住むにいいがなど思ったば、そごさは
前から住んでだ主、いだなだけど。
「あーここさ住んでられねぇ」と思って、
まだ上さ上さど上ったば、仁郷の赤滝さ
出たっけど。

 それで、やっと能恵姫やっと安住の地
求めでな、その赤滝の底の岩屋さ、ヘ
ビと二人で住んでるど。今も赤滝さ住ん
でいるなだど。それを聞いた村人だち
はよ、赤滝のほとりさびゃってお堂こ建
でで、赤滝神社ってやって能恵姫どご
奉ってるなだど。

 この神社は、雨乞いの神様で、日照り
で米とれなくなった時ここにお参りすれ
ば、雨降らせでけるんで、そごであげだ
餅、滝の中さ投げで、その餅が滝に沈
んでいけばその年は大豊作になるって
いうなだ。  


トッピンパラリノプー

   昔、出羽の国の殿様は岩崎兵庫の
守という人で、岩崎にお城がありました


 ある年、このお城に、可愛い玉のよう
な女の赤ちゃんが生まれました。殿様
は喜んで、その子に「能恵」と名前をつ
けました。皆で可愛がって大事に育てた
ので、能恵姫はとても良い子に育ちまし
た。


 子供の時から可愛かった能恵姫は、
大きくなるにしたがって、ますます美しい
お姫様になりました。美しいばかりでなく
、頭がよくて利口で、なにをやってもす
ばらしいお姫様になりました。


 大きくなったある年、月のきれいな晩
に、能恵姫がいつものように琵琶を弾
いていました。すると、それに合わせる
ようにどこからか笛の音 が聞こえてき
ました。不思議に思っていると、次の日
も、また次の日も、能恵姫が琵琶を弾
き出すと、きれいな笛の音が聞こえてく
るのでした。能恵姫は、こら えきれなく
なって、家来の上総の介に、どこで誰が
吹いているのかを確かめて欲しいと頼
みました。


 上総の介が表に出ると、大手門の上
にはたちぐらいの若い侍が座って、笛を
吹いていました。能恵姫の所に連れて
行こうと、そばに寄ったら、その若侍は
すーっといなくなりました。どこに行った
んだと探しましたが、どこにもいません
でした。



 そうして、能恵姫は十八歳になって、
ますます美しくなりました。それで、川連
のお城に嫁ぐことが決まりました。
その婚礼の日、能恵姫は立派な駕籠に
乗って、お供の者たちがたくさんついて
、岩崎のお城を出ました。その日は朝
から晴れた良い天気で、絶好の嫁入り
日和でした。


 行列が栄が淵あたりに差しかかった
ら、あんなにいい天気だったのに、急に
暗くなって雷が鳴ったり、稲妻が光った
り、風が吹いてきたりと大荒れになりま
し た。家来達が必死になって、能恵姫
の駕籠を守ろうとしましたが、ずるずる
と駕籠ごと川の底に引っ張られました。
お供の者たちはどうすることもできず、
見て いるだけでした。



 しばらくすると、雨風が止んで、元の
良い天気に戻ったので、お供の者達は
必死になって川や藪や草むらを探しま
したが、能恵姫はどこにもいませんでし
た。

どうしようもなく、お城に戻って、お殿様
に一部始終を報告しました。すると、お
殿様は可哀想にと悲しんで、気も狂わ
んばかりでした。


 毎日悲しんでいる殿様を見かねて、あ
る日上総の介は一人で、姫様がいなく
なった栄が淵に探しに行きました。する
と、川底のほうから人の話し声のような
もの が聞こえてきました。覗き込もうと
思いましたが、藪や蔓が邪魔してできま
せん。それで、差していた刀を抜いて払
おうとしたら、ポロッと手から落ちて、川
の 中に入ってしまったのでした。


 さあ、困った上総の介は、その刀を拾
おうと川に潜りました。そして川底に行
ったら、なんと、奥の方に岩屋がありま
した。

 岩屋の中には立派なお座敷があって
、その真ん中に能恵姫が座っていまし
た。見ると、大蛇が能恵姫をぐるぐると
巻いて、頭を能恵姫の膝に乗せて、昼
寝をしていました。


 上総の介は驚いて、すぐに逃げようと
しましたが、思い直して「ああ、姫様をお
城に連れ戻さなければ」と、「行きましょ
う」と姫様の袂を引っ張ったら、裂けてと
れてしまいました。それでも、連れて行
きたくて「姫様、お城に帰りましょう」と一
生懸命言いました。
姫様は「私はこの大蛇と暮らすことにな
ってしまったのです。もう、お城には帰ら
れなくなってしまったのです」

そう言って、髪から櫛とかんざしを抜き
取って、ちぎれた袖と一緒に、上総の介
に渡して
「これを私の形見として、両親に渡して
下さい」と頼みました。

 上総の介は泣く泣く城に戻って、殿様
に能恵姫の話をして、形見の品を渡し
ました。
 殿様は、悲しんでいたけれど
「能恵姫を、少しでも苦しみから救わな
ければ」と思い、栄が淵にお堂を建てて
、奉りました。

 そして、形見の櫛とかんざしと袖を、
川連の殿様に届けました。すると、川連
の殿様は、立派なお寺を建ててくれて、
形見の品を納めて、能恵姫の位牌を作
ってとむらってくれました。


 でも、何年か栄が淵で暮らした能恵姫
と大蛇は、大倉村の鉱毒が流れてくる
ので、そこに住んでいられなくなりました


 それで、上流に向かってのぼっていっ
て、小安の不動の滝にたどり着きました
。そこに住もうとしましたが、前から住ん
でいる主がいました。
 ここには住めないと、また上流に上っ
ていったら、仁郷の赤滝にたどり着きま
した。

 それでやっと、能恵姫は安住の地を
見つけて、滝の底の岩屋に、大蛇と二
人で住んでいるのです。
それを聞いた村人達は、赤滝のほとり
に小さなお堂を建てて「赤滝神社」として
、能恵姫を奉っているのです。


 この神社は雨乞いの神様で、日照り
で不作の時にお参りすれば、雨を降ら
せてくれるのです。そして、そこに供え
たお餅を滝に投げ込んで、滝に沈んで
いけばその年は豊作になると言われて
います。

   
   トッピンパラリノプー
佐々木 慶子さん

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