隣の四(し)がれ、わしゃ四(よ)がれ
昔々、あるどこに、じさまちばさまが いだっけど。 その家では、ずっと昔がら正月には 、カレイを五枚買ってきて正月やるなだ けど。それで、十二月二十九日、ばさま 、「じさま、じさま、今日増田の町の日だ がら、カレイ買ってきてけろ、そんま正 月くる」 って、じさまどさ頼んだけど。 したば、じさま、町さ行ったべった。 町さ行ぐな、びゃっこ遅がったんだが、 カレイ四枚しか、ねっけど。 増田の町ぢゅう探したたて、なんぼた ねだたって、四枚しかねっけど。 「なんじお、しかたね。まず、あるころ 買ってぐべ」っ て、ドッコイショと買ってしょったけど。 家さえって 「ばさま、ばさま、カレイ買って来たど」 って、ばさまどさ、見せだんだど。 したば、ばさま、広げで見でな 「ありゃー、いちめ、にめ、さんめ、し め。あらなんだ これ、四枚(しめ)しか ねえしゃ、ほれ。こんただもの、シガレ だべしゃ」 と、そうゆったけど。 じさまとばさま、おが大っきい声 たでで、しゃべるおだがら、隣のばさま 、窓がら 「隣のえ、何やってだなだべ」 って、見でだけど。 「こんただもの、シガレだ!」 って、ばさま、窓がら、カレイ四枚、 バエーって表さ投げだけど。 したば、それ見でだ隣のばさま、 ワラワラど出はてきて、猫に持ってがれ ねうちにって 「隣の四(し)ガレ、わしゃ四(よ)ガレ」 って、 『いち、に、さん、よん』って言えば、『 よいカレイ』だどてよ、それ拾っていって 、それで正月やったけど。 そこのえ、いい正月やって、 一年よかったど。
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昔々、あるところに爺さんと婆さんが いました。 その家では、ずっと昔から正月には 、カレイを五枚買ってきて正月料理で食 べました。それで、十二月二十九日に、 婆さんは 「爺さん、爺さん、今日は増田の市の日 だから、カレイを買ってきておくれ」 と、爺さんに頼みました。 すると、爺さんは市に行きました。市 に行くのが少し遅かったのか、カレイが 四枚しかありませんでした。 増田の町中探したけれど、いくら探し ても四枚しかありませんでした。 「どうにもしょうがない。まず、あるだけ 買っていこう」 と、ドッコイショ買って背負いました。 家に帰って 「婆さん、婆さん、カレイを買ってきた よ」 と、婆さんに見せました。 すると、婆さんは広げて見て 「あらら、一枚。二枚。三枚。四(し)枚 。あら、なんだいこれは、四枚(しまい) しか無いじゃないか、ほれ。こんなもの 、シガレイじゃないか」 爺さんと婆さんが大きい声をたてて 話しているから、 隣の婆さんが窓から 「隣の家は、何をやっているんだろう」 と、見ていました。 「こんなもの、シガレイだよ!」 と、婆さんは窓からバッと表に捨てま した。 すると、それを見ていた隣の婆さん が急いで出てきて、猫に持って行かれ ないうちにと 「隣のシガレイ、わしゃよかれい」 と、 「いち、に、さん、よん」と言えば「よい カレイ」だからと、それを拾っていって、 正月をしました。 その家はよい正月をやって、 一年いい年だったそうです。 トッピンパラリノプー |
藤原 晴子さん
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