ちょうじん子 おまん子
昔々、あるどころによ、「ちょうじん子」と「おまん子」ていう腹違いの子ども、えだなだけど。 先のあばは死んでしまって、後からもらった継母の子どもは「おまん子」だっけど。たいがい腹違えの子どもは仲悪がったんだども、このきょうだいだげはま んじー仲えけど。したばな、おどいる所では、このあばちょうじん子どご、めんこいふりはしてえだども、おどいねぐなれば、いじめでばぁりいるなだけど。 して、なじがしてちょうじん子どごいらねして、なじがして殺しでおだと思ってたけど。 ある時、おどぁ 「上方まいりさ行ってくるがら、このわらしだどご、えぐ見ででけろな、あば」 「ああえ、え、行ってこえ、えってこえ」 そう言われで、おどまだ、上方さ行ったけど。。 それがら、ある日 「なじがして、このちょうじん子どこなば、いらね。殺してしまいでおだ」 どて隣の家さ相談に行ったけど。 それ見て、おまん子、きっとじんじょとでぉ、あばそうしていくのはいい事でなぇっどて思って、後ついていったけど。して聞いてらけど。 「やあやあ、おれ、ちょうじん子どごなば、あのくされわらしなば、えらね。なじがして殺してしまいで。なんじせば、えがべや」って 「それなば、握りママさ、毒でも入れでかせで、死なせればいいんだ」 とそう云ったけど。 おまん子、ワラワラどあばより先になってきて 「アネアネ、明日よアネどごさ、握りママさ毒入れてかせるていうへで、食ったてでぎねど」 したば、次の朝まになったば 「んがだ、山さ遊びにいってこえ、握りママにぎってけるへで」 あばそう云ったけど。して、片っぽは毒入れて、片っぽは普通のうめぇ握りママど、二つにぎってけだけど。 で、それたげで二人山さ行ったけど。昼間になったどて、 「アネアネ、そのママなば毒入ってるがら、ぜったい食ったて、でげね。それ、そっちさ投げて、おれなのママ食ってくこだ」 二人して、そのママ食って、毒入ったママば投げで、元気で家さ夜あがりしてたけど。 「今、来た」 |
昔々、あるところに「ちょうじん子」と「おまん子」という腹違いの姉妹がいました。 先の母は死んでしまって、後妻の継母の娘は「おまん子」でした。腹違いの姉妹というのは仲が悪いものですが、この姉妹はたいそうな仲が良かったのです。 けれど、この継母は、父親の居る前ではちょうじん子を可愛がっているふりをしていましたが、居ない所では、いじめてばかりいました。そして、どうにかして、いらないから殺してしまいたいと思っていました。 ある時、父親は 「上方参りに行ってくるから、この子ども達の世話を頼んだよ、継母さん」 「ええ、わかりました。世話は任せていってらっしゃい、いってらっしゃい」 そう言われて、父親はでかけました。。 それから数日して 「どうにかして、このちょうじん子は置きたくないから、殺してしまいたい」 と、隣の家に相談に行きました。 それを見ていたおまん子は、おそらく母が相談に行くのは良いことでないだろうと、そっと後をつけました。そして、聞いていました。 「ねえねえ、私はちょうじん子なんか、あのばかな娘なんかいらないんだ。どうにかして殺したいんだが、どうすればいいかね」と 「それなら、おにぎりに毒でも入れて、殺せばいいじゃないか」 と、そう教えました。 それを聞いたおまん子は急いで、母より先に帰って 「姉さん姉さん、明日、姉さんを、おにぎりに毒を入れて食べさせるというから、食べちゃいけないよ」 すると、次の朝 「おまえたち、山に遊びに行っておいで。おにぎりをすくってやるから」 と、継母がそう言いました。そして、片方には毒を入れて、片方は普通のおいしいおにぎりと、ふたつ握ってくれました。それを持って二人で山に行きました。昼になったので 「姉さん姉さん、そのおにぎりは毒が入っているから、絶対食べてはいけない。それはそこに捨てて、私のおにぎりを食べることにしよう」 二人でおいしい方のおにぎりを食べて、毒の入ったおにぎりは捨てて、元気に、夕方家に帰りました。 「ただいま」 と言ったら、死んでくるはずのちょうじん子がピンピンして戻ったので、継母は驚いて 「おにぎりを食べたかい」 「ええ、みんな食べてきましたよ」と言いました。 変だなぁと思って、また次の日、隣の家に相談に行きました。すると、またおまん子が後をつけました。 「おにぎりに毒を入れたって、しぶとくてね、なんともなかったよ。どうすればいいんだろう」 「それなら、夜寝ている上に 梁の上から石を落として、つぶしてしまえばいいんだ」 おまん子は驚いて急いで走ってきて 「姉さん姉さん、今晩、 梁の上から石を落として殺すと言っているから、私の布団に一緒に寝ましょう。姉さんの布団には、カボチャを入れておきましょう」 そう言いました。 「わかった、わかった」 おまん子の布団に一緒に寝て、ちょうじん子の布団に大きなカボチャを入れておきました。コンモリと、いかにも人が寝ているようにして。 夜中になったら、ドシドシという音がしました。すると、継母が大きな石を持って、梁の上に登っていくでした。そして、ちょうじん子の真上にドドォーんと 落としました。すると中に置いたカボチャが潰れて、梁の上にいる継母の額や顔にカボチャの中身のワタが飛んできました。継母は顔をこすって、腹わたが飛ん できたとから、死んだと思いました。勝ったって。 次の朝 「ちょうじん子、おまん子朝になったから、早く起きてご飯を食べなさい」 と言ったら 「はーい」と、二人揃って起きてきたではありませんか。 さあ、驚いて 「あんなふうにしてつぶしたのに、どうして生きて居るんだ」 と、寝床に行って見ると、ちょうじん子の布団の中にはカボチャがつぶれていました。 さあ、これじゃダメだと、また次の日、隣の家に相談に行きました。 「どうしてわかるのか、そういうふうにされたんだ。どうしたらいいんだろう」 「それなら、箱に入れて、山にでも埋めてしまえばいいんだ」 また、おまん子はびっくりして走ってきて 「姉さん姉さん、姉さんを明日箱に入れてずっと山奥に埋めると言うから、大工に、箱を作るとき、手が通るぐらいの穴を作ってもらって、姉さん」 と、言いました。 次の日案の定継母は、大工を頼んできました。 それで、箱を作っている時 「大工さん、大工さん、なんとか、その箱の中に私の手が一つ通るくらい小さくていいので、穴を開けてもらえませんか」 「これぐらいの穴でいいかい」 と言って、穴を一つ開けてくれました。 そして、継母はその箱にちょうじん子を入れました。 すると、わからないうちに、おまん子が木の小枝をたくさん集めてきて 「姉さん姉さん、連れて行かれる途中、この穴から小枝を落としていって下さい。そうすれば、私が明日探しに行くから。ポツポツと所々落としてって、姉さん」 「いいよ、いいよ」 そうして、次の日入れられて、山に担がれて連れていかれました。 いくつも山を越えて連れて行かれるうち、ちょうじん子は、おまん子に言われた通り、穴から一本ずつ柴を落としていきました。 ずーっと山奥に行ったら、「ここでいいだろう」と土を掘って、その箱を埋めました。 さあ、埋めに行った人達が家に戻ってきたのを確かめたおまん子は、次の日 「母さん、私、山に遊びに行きたいから、御馳走を作ってくれませんか」 「ああ、いいよいいよ。今度こそお前一人になったから、なんでも好きな物をつくってあげるよ。いっておいで」 そう言いました。 そして、御馳走をたくさん作ってもらって、その小枝を頼りにして、おまん子は出かけました。 ずーっといくつも山を越えて、山奥のそのまた奥に行ったら、小枝がプツンととぎれて無くなっていました。よく見ると、掘ったばかりの土の跡があります。ああ、このあたりだなと思って 「姉さーん、姉さーん!」と叫ぶと 「おまん子かいー、私はここにいるよー」と云う声。 おまん子は早く助けたくて素手で掘りましたが、痛くて難儀していると、そこに白髪の爺様が現れました。 「お前のやさしい心はよくわかった。私が掘ってやるから、少し待ちなさい」と言って、その爺様が掘ってくれました。 そこから箱が出てきて、その中に姉さんがいました。 「姉さん、助かってよかったねぇ」と二人は抱き合って喜びました。そして、白髪の爺様と三人で、継母が作ってくれた御馳走を全部食べました。 「私も御馳走になってな。けれど、家に戻っても、どうしても幸せには暮らせないだろうから、山の麓の長者の家で、下働きを二人ほしいと書いてあるから、そこに行って頼んでみなさい」 と言われて、二人で山を下りていったら、やはり長者の家で下働きを二人ほしいと、看板を立てていました。 そこで、お願いして使って貰うことになりました。 その頃家では、上方から父親が帰ってきました。 「今、帰ったよ。こどもたちはどうしている」 と、おみやげを一杯手に持って、帰ってきました。 「あの子たちは、二人とも何処にいったのか、わたしだけおいて、まったく家に戻ってこないよ」 と、継母が言いました。 父親は、泣いて悲しんで、可愛い二人の娘達に出て行かれて、可哀想で残念で泣いているうちに、眼が見えなくなってしまいました。泣きながら、その娘達を探そうと、たった一つ鈴を持って家をでました。 「天にも地にも変えられない、(可愛いむすめたちよ) ちょうじん子とおまん子が何処に行ってしまったんだ ちょうじん子とおまん子よ、どこかにいるのなら 声を聞かせてくれ ちょうじん子 便りをおくれ おまん子 よ 」 鈴をカランコロンと鳴らして、あちこちを歩きました。 |
本間 智佐子さん
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