東成瀬の昔っこ
年寄りの知恵
| 昔、あるどこさ
貧乏な殿様が居だけど。 働げねぇ者は 六十二才になったら、山さ連れでっ て、 木の枝さ はさんで捨てでくるごどを義務付けら れで え だけど。 そごである日、殿様の家来が 自分のあばが六十二 才になったなで、捨てでこねぇば ならねぐなったど。 殿様に おごられねぇうぢと思って、よんま うめもん かしぇで、朝ま早ぐ あばどご しょって山さ 出がげだ けど。 そうして、途中まで行ぐど あばは木の枝をポクッポク ッと 折りはぢめだど。 「なんで折るなだ」 って聞いだば 「おめが 帰りに道さ迷わねで、無事にえさ戻れるべ」 と言ったけど。 息子は、あばのやさしい心に驚き、とても捨てて帰る ことがでぎねぇで、また、人目をさげで あばを背負い 家さもどってきだど。 息子はあばを奥の部屋にかぐして、暮らしてえだけ ど。 殿様が家来を集め、知恵くらべをやったけど。 問題の一つ目は、曲がった穴のあいた玉に 糸をとお す事だけど。 息子はあばさ聞いで、出口さ砂糖ッコぬって、蟻コの 脚さ 糸コつねぇで 穴さいれてやったど。糸はみごと にとおったけど。 二つ目は灰で縄をなってこえ、という事だけど。 それで、まだ、あばさたずねだば、あばはまず縄をな って、それをぬらして、塩をまぶして焼ぎ、そのまま、 そっくり持ってえげ、と聞がせでけだけど。 殿様の家来だった息子は、二つとも見事に合格し、殿 様にほめられ、この知恵をだれがら学んだ、と聞かれ だけど。 息子は、あばを捨てにいったごど。あばをかぐして暮 らしてだごどをみな話し、あばから聞いだ、と話した ど。 それがら、殿様は年寄りを捨てるごどをやめだど。 あばを助けだ息子はみんなにほめられだんだど。 とっぴんぱらりのぷ〜 |
昔、あるところに貧乏な殿様がいました。 働けない者は六十二才になったら、山に連れていっ て、木の枝にはさんで捨てて来ることを義務付けられ ていました。 そこである日、殿様の家来が、自分の母が六十二才 になったので、捨ててこなければいけなくなりました。 殿様に叱られないうちに、夜においしいものを食べさ せて、朝早く母を背負って山に出かけました。 そして、途中まで行くと 母は木の枝っをポクッポクッ と、折り始めました。 「どうして折るの」 と聞いたら 「おまえが帰りにみちに迷わないで、無事に家に戻れ るようにだよ」 言いました。 息子は、母のやさしい心に驚いて、とても捨てて帰る ことができないで、また人目を避けて母を背負って家 に帰ってきました。 息子は母を奥の部屋に隠して、暮らしていました。 殿様が家来を集めて、知恵くらべをやりました。 問題の一つ目は、曲がった穴の開いた玉に糸を通す 事でした。 息子は母に聞いて、出口に砂糖をぬって、蟻の脚に 糸をつないで、穴の入れてやりました。糸は見事に通 りました。 二つ目は 灰で縄をなってこい、ということでした。 それでまた、母にたずねたら、母はまず縄をなって、 それを濡らして、塩をまぶして燃やして、そのままそ っくり持っていきなさいと教えてくれました。 殿様の家来だった息子は、二つとも見事に合格して 殿様に誉められて、この知恵をだれから学んだと尋 ねられました。 息子は母を捨てに行ったこと、母を隠して暮らしてい たことをみんな話して、母から教えてもらったと話しま した。 それから、殿様はお年寄りを捨てることをやめまし た。 母を助けた息子はみんなにほめられたそうです。 とっぴんぱらりのぷー |

福地タケ子さん
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