東成瀬の民話

 

すずめの仇討ち

昔 昔 その昔のことだ。

柳にすずめが巣を作って、チュンチュン鳴いでえだけど。
そごさ、山姥がやってきて「すずめ、すずめ。おれさ、そごさある卵けろ」
と、言ったど。したば、すずめぁ「いだましくて、けられねぇ」
「んだば、おめぇどご、飲むぞ」と、言ったなで、いだましがったのも、一つやったど。

山姥は「なに、ひとつー これなば、片方の手にも足りねぇ、もう一つけろ」と、言ったけど。
すずめはいだましがったが、まだ、一つやったど。
その卵取りぱずして、馬のクソさ落どしてしまったど。
まぁだ、山姥は「馬のクソさ落どしてかれねぇ、もう一つけろ」と次々と取りあげだど。

「あどねぇ」と言ったば、「んだば、んがどご飲んでけるぞ」と言って、親すずめまで喰ってしまたど。

その馬クソに落ちだ卵から生まれたすずめは、三年後に仇討ちしに、山姥のいる山に向かったど。

途中、ビダビダとビダクソがきて「すずめ、すずめ、どごさえぐ」と、聞いたば
「三年前の親の仇とりにえぐ」と、言ったど。

次にまだ、そごさ、まっかだんぶりも来て、同じごどを聞いたど。
そして、まかまかビッタ、まかビッタ、チュンチュンと歩いていると、
針・うす・トヂ・ハチ・ヘビも集まってきて、一緒に仇討ちに行ったど。

したば、山姥留守だけど。
そこで、みんなで相談して、ヘビは味噌ガメに入り、トヂは囲炉裏に入り、ハチは裏口、まっかだんぶりとビダクソは入口、針は寝床に入り、うすは張りの上にえで、山姥の来るのをまってだどうー。

しばらぐ待っていたば、そごさ 山姥来て、
「さんび、さんび、からさんび。上から山かぜ吹いてくる。あぁさんび、さんび」と、
囲炉裏の火をボリボリほって、尻を出すど、トヂがバヂンとはじげだど。

山姥は「あや熱ちでぁ、熱ちでぁ、こんたじぎゃ味噌つければいいもんだ」と味噌ガメさ手をつっこんだど。
したば、カメの中で待ってだヘビぁ、ガチッとかぶりついだど。

「あや いでぇ、いでぇでぇ、こんたじぎゃ寝るしかねぇべぇ」と、寝床さ走ってえて寝だば、こんだぁ針が体中ヂグモグと刺したけど。
とでも、痛でぇくて寝でられねぇくて、裏口さ逃げるどて行ったど。

裏口さ行ったば、ハチが待ってで、あっちこっち体中刺されだど。
「あや、いでで・・・・・・・」と逃げ回ってるど、ビダクソさ足すべらしぇで、ゴロンと転んだど。

そしたば、その上さ、ちょうどえぐ張りの上がらゴロゴロドスンと、うす落ぢできて、山姥の体の上さ、ドサッとのさったけど。

山姥は、体も動けねぇば、声もでねぇでえだば、そごさ まっかだんぶりがやって来て、山姥の首をギューッとおさえだど。

山姥は「ごめんしてけろー、ごめんしてけろー」と、なんども泣きながら言ったけど。
山姥は、今度から悪いごどしねぇって、みんなさ約束したど。

親の仇をとってもらったすずめは、助けでもらったみんなさ、礼言って帰ったど。
とっぴんぱらりのぴーの
さんしょうの実っこぱらり

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語り 備前ムツさん

宵節句

昔々、ある山奥の村でな、五月の節句の前の日だけど。

その日は、ええ天気でな、村の人達ぁ、「明日は節句だがら、今日は頑張って田植えでがして、明日ぁゆっくり休むべぇ」と言って、おどがら、あばがら若い人達ぁ、田んぼさ出て行って、年寄りとワラシだぁばり村さ残してしまったけど。

昼間も過ぎで四時頃になったば、西の方の空が真っ暗になってきたけど。
あらぁ雨など降ってこえば、よでいっこでげねぇ、みんな頑張ろうって言って田植えしたけど。

したば、夕方になって、黒えぇ雲ぁ村の上まで広まってきて、遠くの方で雷ぁ鳴り始めだけど。ポツリポツリ、雨っこ落ちて来たけど。

そしたば、村一番の年寄り爺様、「これこれワラシだ、早ぐ家さ帰れ、山がらオニコ来るがもしれねぇぞ」と、爺様 村中さ、触れ回したけど。

その声聞いで、家さ帰るもの、神社の回りウロウロするもの、そのうちイナズマ光って、雷鳴って大雨風になってきたけど。

山の方がら赤鬼、青鬼達が来て、家の軒下、床下さ隠れでえだワラシだ見つけて、山さ連れで行ってしまたけど。

雨もやんで夜暗くなってがら、ワラシだ三人ばかり村さ帰ってきたけど。村ではワラシだオニにさらわれだどて、大騒ぎしてだけど。

「あら、おめぇだもオニにさらわれだど思ってだば、どごさ隠れでだけてよ」と、村の人達はびっくりしてワラシださ聞いだけど。
ワラシだ「暗くてよぐ分がらねぇけ」と言うなで、明日明がりぐなってがら行ってみるべって言って、みんな家さ帰って行ったけど。

次の日、ワラシだど村の人達ぁ、ワラシだ隠れだどごさ行ってみたば、神社の堀のふじさ生えでだヨモギとヒョンシコの中さ隠れだあどぁあったけど。
村の人達ぁ、オニだぁヨモギどヒョンシコしぎでねぇんだなぁ、と思ったけど。

次の年の五月四日の夕方、家のへぇり口や回りの窓さ、ヨモギどヒョンシコさげで早めに家の中さ隠れだど。

だが、その晩もオニコぁ山がら出て来て家々回って見だそうだのも、ワラシだ一人も連れで行かれながったそうだ。

それがら、ずーと五月の四日の夕方になると、どごの家も軒下さ、ヨモギどヒョンシコさすようになったど。
とっぴんぱらりのぷー。

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語り 藤原晴子さん

 

和尚さんと小僧の知恵くらべ

昔、昔ある山奥の寺に和尚さんと小僧が二人住んでいたんだけど。
そして、彼岸のある日、あんこ鍋火さかげで、
和尚さんな「小僧、小僧おれぁお経あげるうじ、あんこかましへ」って言うなで
「こりゃ ええごどたのまれだ」そう思ってかましがだ始めだけど。

和尚のスキ見てあんこなめれば、和尚経やめで「なめたて でげねぇ」
また、今度だばわがらねえと思ってなめれば、また「コラッ」「悪いこどでげねえなぁ」

そうこうやってるうぢ、あんこ餅出来て仏様さ供えで、
和尚さんな「小僧、小僧 おれ町まで行ってくるがら、寺の中掃除しておげな」そう言って町さ出で行ったけど。

小僧まだ、仏様さ上げたあんこ餅気になって、一つぐれゃいがべと思って、一つ食い、また一つ食いしてみんな食ってしまったけど。

さあ、みんな食ってしまって、なんとしたらええべなぁ、そう思って「こりゃ いいこと考えた。仏様の口さあんこ塗っておげばええな」
そして、あんこべったり塗って、腹いっぺぁ餅食ったば、眠ふたくなって掃除もしねで寝でしまったけど。

そごさ和尚さん帰って来て「掃除もしねで寝でばがり」と、カンカンに怒って仏様の前さ行ったば、あんこ餅一つもなぐなってらけど。
「あんこ餅食って、寝でばがりえだが」

「オラ一つも食わねぇのも、仏様食ってらけ」
「仏様食うわげねぇがべぇ」
「んだたてよぐ見ての、仏様の口さ あんこいっぺぇついでだがら」

「仏様食うわげねぇがべぇ」
そう言って、和尚さん木魚の棒で仏様の頭はだえで「仏様仏様 おめぇあんこ餅食ったが」
そしたば仏様「くわぁん 食わん」って言ったけど。
「ホラホラ仏様なの『食わねぇ食わねぇ』って言ったべ」

そしたば、今度小僧「チョット チョット待で」と、鍋さ水汲んで湯っこ沸かして、その仏様湯鍋さ入れだけど。
そしたば、仏様「くった くった 食った」と言って沈んでしまたけど。

これで、小僧さんの勝ちだけど。
とっぴんぱらりのぷー。

 

tisa2
                      語り 本間智佐子さん

キツネとおんぺいじい

昔々あったけどな。真戸という村におんぺいじいという人、えだけどな。
正月もそんま来るなで、町さ、さかな買いに行ったけど。わらじはいで、その他に二足も背負って歩れて行ったけど。

増田の町まで行ったけど。あぎびこだし背負ってな。
魚や油げ、さまざま買って早ぐ暗ぐならねうぢに、家さ行ぐどて歩れて来たけど。

入道の入口まで来たら、向こうに家が見で、そんま家さ着ぐど思ってほっとしたけど。
そごで、どっこいしょとねまって、背負ったもの下ろして休んだど。

爺ねまってえだら、向こうにキツネコえで、爺どご見てオッパコくるくるっと回して、三回ぐれぇ回り、爺えだ向こうのヤブさえったけど。

爺黙って見てえればえがったな、「このガギおれどごだます気がぁ、んがになばだまされねぇぞ」と言って、ちょんど小便でるので、シャーシャ-とかげでやったけど。
キツネびっくりして、ヤブさひゃってえったけどな。

爺眠ぐなってコクリコクリとねむかぎし、いびぎかいで寝でしまったど。しばらく寝でで夢見だけど。
家さ行って、こっそり仏様に上がって、んばどご見でえだど。んば、囲炉裏でトーフあぶりしてだけど。トーフ焼けるのもんばこねぇで、「んば トーフ焼けるぞ」と大きな声出したら、

「なんでがぁ爺 トーフ焼けでるでが、あんまりもろぐ言うな」
と言って、みんじゃのまぢぶねがら 手桶で水いっぺぇ汲んで、爺どごさ、ざわっーとかげでやったけど。

「ひゃあ はっこい」と思ったとき、目がさめだ。そしたら、入道の入口さねまって寝でだけど。

爺寝でいる間に、買い物してあぎびこだしさへぇてだ魚っこや油げなど、キツネが喰って、ほっちらがしてだけどや。

爺がキツネに、シャーシャーやったので、いたずらされたなだけど。
それがら、爺も悪いことしなくなったけどなぁ。
トッピンパラリン さんしょくでぁがら やまさえげ ニンニクくでぁがら やぎさえげぇ

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語り 鈴木ジュン子さん

小川寺(こがわでら)

昔、あるどごろさ、大っきい山があったけど。
そごさは、長い長い峠道あったけど。して、隣の村さ行ぐにはその峠越えで、まる一日かがるけど。

その山の麓さ、一軒の茶屋あったけど。その峠を越える時は、旅人はその茶屋で腹ごしらえして行くんだど。
んだがら、この茶屋は繁盛してだっけど。

ある日、旅人が昼頃出かげだなで、頂上さ着いだば日が暮れで、真っ暗ぐなって向こうも見えねくて歩ぐ事もでぎねなで、大きな木の下で一晩泊まるごどにしたっけど。

夜中の十二時過ぎだば、急に山鳴りしてサンズク雨降ってきて大雨なったけど。どうしようもねなで、木の下さぴったりくっついでいだっけど。

その雨が上がったら、いい月夜になったけど。したば、そごさ、ゆるりがら鬼コだいっぺ集まってきて、ノンノンと火炊いたけど。
して、みんなで「小川~、小川~、小川~」て三回叫んだば、きれいな娘っこ出で来たっけど。

したら、鬼コだぢ「おめえの親だぢ茶屋やってで、四足、二足喰われねえ人達さ、四足、二足でたれコ作って、うどんなの喰わせでるがら、そのバチで、おめどご火あぶりさかげねえばでげね」と言って、娘を火あぶりかげるけど。
そこの木の下で隠れでだ旅人、可哀想だどて見でだけど。

夜明げでがら、麓の茶屋さ下りできて、団子やらなにやらいっぺ買って、「小川に上げ申す、小川に上げ申す」って言って食ったなだけど。

したば、茶屋の親方「小川ってな、おら家の娘だ。なしてそうやって上げるなだ」って聞いだけど。それで、旅人は夕べ峠で見だごど話して「それで、あまり可哀想で上げるなだ」って言ったけど。

親方は「んだば、おれもそごさ行ってみで、連れでてけろ」て言ったなで、旅人は親方を連れでたけど。

したばやっぱり、一晩泊まったどごさ行って待ぢでらば、大雨風になって、ガラッと晴れだば、鬼コだ集まって来たけど。
「小川・・小川・・小川・・」って呼ばたけど。したば、その小川って娘、旅人がらもらったごっそう、みんなさ配ったけど。
その日は火あぶりかげねえで、鬼コだぢ帰ってたけど。

茶屋の親方は、親のバヂを子どもがかぶるとはこの事だど思って、
家えさ帰ってがら小川って言うお寺を建てで祀ったけど。
それが今のフダラクさある「父母の恵の深き小川寺」って伝えられでるなだど。
とっぴんぱらりのぷー。

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語り 福地タケ子さん

  すずめっことキツツキ

むがしむがしずっと大むがしによ、キツツキとすずめっこぁ姉妹だったけど。
そして、とでも仲えぐ暮らしてだけど。

とごろがよー。姉のキツツキにぁ、とでも困ったくせ一ツあったけど。
それど言うのは、まずまずじまんこまげで、おしれっこ、口べんこ何回もぬったり、つけだり長げぇ時間かげで化粧するもんだけど。
それさ、比べで妹のすずめっこどきたら、まるっきりかまわねぇほうで、せえぜえおはぐろつけるぐれぇだけど。

そうしているうぢに、二人の姉妹だ遠ぐの町さ働ぎに行くごどになったけど。
二人ながら、一生懸命働いだのでみんなにめんこがられて、幸せに暮らしていだけど・・・・。
そうした、ある朝間のごどだけど。二人して髪っことがしていだば、
「いながのあば、急に病気になって大変だがら、すぐ家さ戻ってけれ」って、知らせが届いだけど。二人ながら、腰抜けるころびっくりしたけど。

妹のすずめっこ、おはぐろぬるどて口開げたじぎ、ドデンしたひょうしに、ほっぺたさおはぐろつけでしまったけど。
ンだのもそんたなさかまわねぇで、そのまま飛んで家の方さ行ったけど。
姉のキツツキぁ、あわでで飛んで行くどころが、ますますおしれっこていねえにしけで、えぐようにせば、
「ほほう、しばらぐ見ねぇでらうぢにまんつきれぇになったごど」って褒められるべど思って、化粧して行ったけど。

ほっぺたさ、おはぐろしけだまま飛んで行ったすずめっこぁ、やっとあばの死に目さあうごどでげだけど。
あば、すずめっこどご見で「よぐ来てけだな、ありがど、ありがど」って涙っこ流して喜んだけど。
姉のキツツキぁおしれっこぬるなさ手間かげすぎで、家さついだじぎぁ、あば死んでしまって、だみ出した後だけど。

それを天で見でいだ神様言ったけど。
「すずめこ、すずめこおめぇ親思いの子だがら、これがら人間の近ぐで住めるようにしてやる。そうすれば、米っこもあまり難儀しねぇで食えるだろう」と、言ったけど。
姉のキツツキぁどごさ神様、「おまえは、自分の化粧するごどばかり考えて、たった一人の大事な親の死に目にも会えねぇ親不幸者だがら、自分で餌さがせばえぇ」って、とでもごしゃえで言ってだけど。

んだがら、キツツキの羽っこきれいだども、すずめっこみでえに、家のそばで暮らすごども出来ねぇで、木さつかまって、トントントン口ばしで木つづいで、自分で餌探さねぇばでげねぇぐなったんだど。

すずめっこのほっぺたさ丸いはん点っこついでるなよ、あれぁ、あばさ会いに行ぐじぎ、あまりあわででつけだ、おはぐろのアド(跡)なんだどよ・・・・。
とっぴんぱらりのぷー。
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                      語り 本間智佐子さん

年寄りの知恵

昔、あるどごさ貧乏な殿様が居だけど。働かねぇ者は六十二歳になったら、山さ連れでって、木の枝にはさんで捨てでくる事を義務付けられてえだけど。

そこである日、殿様の家来が自分の母が六十二歳になったなで、捨てでこなければならなぐなったど。
殿様におこられねぇうじと思い、夜うまいものを作って食わせで、朝早ぐ母を背負って山さ出がげだど。

そうして、道中まで行ぐど、母は木の枝をポクッポクッと折りはじめだけど。
「なんで折るなだ」と聞いたば、「お前が帰りに道に迷わねで、無事家さ戻れるべ」と言ったけど。
息子(家来)は、母のやさしい心に驚き、とでも捨てで帰ることがでぎねぇで、また、人目をさげで母を背負い家さ戻ってきだど。

息子は母を家の奥の部屋に隠して、暮らしてえだけど。

あるづき、殿様が家来を集め、知恵くらべをやったけど。
一つ目は、曲がった穴の開いた玉に糸を通す事だけど。
息子は母に聞ぎ、出口に砂糖をぬり、蟻の足に糸をつなぎ穴に入れてやったど。糸は見事に通ったけど。

二つ目は、灰で縄をなってこえ、という事だけど。
それでまだ、母に尋ねだば、母は「まず縄をなって、それを濡らして塩をまぶして焼ぎ、そのままそっくり持ってえげ」と聞がせでけだけど。

殿様の家来だった息子は、二つとも見事に合格し、殿様にほめられ、「この知恵だれがら学んだ」と聞かれだけど。
息子は、母を捨てに行ったごど。母を隠して暮らしてだごどをみな話し、母から聞いだ、と話したど。

それがら、殿様は年寄りを捨てるごどをやめだど。母を助けだ息子は、みんなに褒められだんだど。
とっぴんぱらりのぷー。

take 語り 福地タケ子さん

さるとつぶ

春、ポカポカとぬくい日のことだ。
さくらの花もあっちこっちさ咲き始めたころの話だ。東の方の山はあひら山、西の方は三角山(うるびら山)があった。その三角山の話だ。

三角山の木のまっかさ、サルが腰かげで、おじじがねぇ様子でキョロキョロあっち見、こっち見してえだけどな。
つぶはつぶで、山のふもどの田のくろさ上がって、山の上のサルを見つけで、おたがいジーとにらめっこしてえだけど。

つぶはゆったけど。
「えっつもえっつもいたずらするサルめぇ」と、
「サル、サル、三角山のコノハザル、ケッチの赤いもおかしかるらん」と、大っきい声で叫んだど。

なにをこのがぎと、サルは面を真っ赤にして、
「つぶつぶと、つぶ田ケ原のゴミかぶり、ケッチのまがたもおかしかるらん」と、二度も繰り返してゆったんだど。

そして、「この野郎、ふみつぶしてけるぞー」と、山よりどんどん下れできたけど。
んだども、ケッツの赤いサルが来るころには、とっくにゴミの中にもぐり、かぐれでしまたけど。
サルが下れできたどぎぁ、つぶはゴミの中で、
「どうだサル、まいったが・・・・・・・」と、ニヤニヤわらってえだけど。

サルは、カッとなり、赤い面をますます真っ赤にして、
「がぎつぶ、どごさえった」と、田のくろ踏み上げたり、けったりしてみだが、つぶはどっからも出てこねぇがったど。

「この次会ったら、ババーーーンと、やっつけでやる」
と、つらもケッチも真っ赤にして山の上さ、上がってえったけど。
とっぴんぱらりのぷー。 jun1                      語り  鈴木ジュン子さん

    唐土のトラ

昔、じんじどばんばどえだけど。まんずくされ家さ住んでえだけど。
雨ぁ降った晩に、
「じい、今夜あだりトラ来るがも知れねぇな、だども唐土のトラより、
古家のムリの方がおっかねぇな、じい」
「んだな、んば」と、話してだな、唐土のトラこっそり聞いでえだけど。
「それなば、俺よりおっかねぇおだべが」
と、思ってえだどさ、どろぼうがきて、馬でも盗もうと、尾っをぱつかんだば、
唐土のトラの尾っぱだけど。
したば、唐土のトラは、古家のムリにしまがれだと思って、逃げようとした。
が、どろぼうは、馬だどばかり思ってしまって、離さねぇで、あまり強く二人で
引っ張ったので、ボツリと尾っぱもげだけど。
唐土のトラはやっぱり古家のムリは、俺より強いど思って、
痛でぇケッツひぎづって逃げだど。
どろぼうもドデンして、逃げだけど。
じんじどばんばは、古家のムリのおかげで、唐土のトラにも喰われねぇがったし、
どろぼうにも入られねぇで、えがったどーーーーーーー。
やっぱり古家のムリぁおっかねぇな。
とっぴんぱらりのぷー。

* 唐土 ー 昔、中国を唐土とよんでいた
* 古家 ー 古い家のこと
* ムリ ー 雨が漏ること

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語り 備前ムツさん

   へっぴり嫁

昔々、ある所に爺様と婆様がえだっけど。
そごの家さ、ひとり息子がえでな、嫁っこもらう事になったけど。

ツヅラの上さ、シマの風呂敷づづみをしょった働きそうな嫁様が来たけど。
爺様も婆様も大喜びだったど。

それから一週間もした頃、嫁っこなんだが元気がなくなって、青い面して、
苦しそうな面になったけど。

婆様しんぺえして「これこれ姉、どっか、わりが」と、聞いたら、
「どっごもなんてもねぇのも、屁ぇでるながまんしてだぁ」って、言ったけど。
したば、婆様、「屁なんぞ、気にしねぇでまげれ」って、言ったんだど。

「んだたて、まげれば大変なごどになる」
「屁たれだぐれぇで、大変な事などねぇ。遠慮しねぇでまげれ」って、言ったけど。
嫁っこも何日も我慢しでだもんだから、
「んだら、遠慮しねぇで、まげらせでもらう。爺様、婆様、あでぎぶじさ、しめぇででけろ」
っと、言ったけど。

屁たれだぐらいで、あでぎぶじさしめぇでろ、なんて言うもんだがら、
爺様と婆様不思議に思って、しまえでだば、
嫁っこ今までがまんしてだ、屁おもいっきりやぶれで、
「ビビビーーーービ ビビビーーーービツ」ど、ぶっぱなしたけど。

そしたば、家の中さ、地震でもおぎだように、ユサユサとゆれで、
あでぎぶじさしまえでだ爺様ど、婆様ど、ハッポまでぶっとばされで、ギダッとしかがたけど。

嫁っこ、腹の中のガスがみなでで、スキッとしてええ気持ちになってだば、
ハッポで、「助けでけろ、助けでけろ」って、さがぶもんだがら、
外にえだ息子ぁ急いで助けでけだけど。

あんまりおっかねえ目にあった爺様、婆様は、嫁っこ屁たれるたんびに、
こんたおっかねぇ思いするごたば、とでもでけねぇ。どて、
「姉っこまじ家さ帰ってけれ」と、嫁っこどごさヒマっこだしたけど。

嫁っこは、とでも屁たれねぇでなば、暮らしてえがれねぇっていうなで、
なんじもしがだねぇぐ、ツヅラとシマの風呂敷づづみをしょっかげで、
家さ帰って行ったけど。

村はずれまで行ったば、大きな栗の木の下さ、村の若者だいっぱい集まって、
思案しながら上を見でだけど。そごさ、嫁っこぁ通りかがって、
「お前だぢ、なにやってだなだ」と、聞いたけど。
したば若者だぁ、「この栗の実落どしでぇのも、木ぁあんまり大きくて、
なんとして落どしてえぇが考えでだどごろだ」と、言ったけど。

したば、屁たれ嫁っこぁ「こんたおのぁ、わけねぇべ、おまえだぁ、まず、しゃげれ」と言って、
ツヅラと風呂敷づづみを下ろして栗の木さ、尻おっつけで
「ビビビーーーービ ビビビーーーービ」と、屁たれだけど。

そうしたば、大きな栗の木さ大風ぁ来たみだいに、ゆらゆら揺れで栗っこぁボダボダと
地面さ、みな見ねぇぐなるころ落ぢだけど。
若者だぁ、喜んで、姉っこどさ、栗の実えっぺぇけだけど。
えっぺぇ栗っこもらった嫁っこは実家さ帰ってきたけど。

その話を聞いた爺様と婆様は、屁ったれ嫁っこどごなんとがもどってきてけれと、
頼んだど。そして、迎えに行って連れで来たっけど。

それがらは、屁ったれ嫁っこは、あっちこっちがら頼まれで、
屁をビビビーーーービビビツとたれでは、ほうびをたくさんもらって来たど。
おかげで、屁ったれ嫁っこの家ぁ親方衆になったけど。

それでな、嫁っこさ、丈夫な部屋こしゃでけで、屁たれでぐなった時ぁ、その部屋さ行って、
屁まげるなだけど。
とっぴんぱらりのぷー。

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藤原晴子さん

  屁に追い払われた盗人

昔、あるどごろさ、三人の娘っこ達えだけど。
そして、正月も来るどて、三人で餅つき始めだけど。

そごさ、盗人ぁ ぬぎ足、さし足、忍び足で、何がええものねぇべがど、
あだりキョロキョロど見でだば、その時一番上の姉ぁ
「ぬすびどぉーん」
と、屋根吹き飛ぶべがど思う程大っきい屁ひったけど。
したば、盗人ぁ びっくりして、二足、三足後ろさ引っ込んだけど。

んだのも娘達ぁ何事もねぇようにして、
「ヨイショ ヨイショ」と、餅つきだげど。

盗人ぁほっとして、胸なでおろして、まだ一足、二足ど進んだじぎ、今度ぁ二番目の娘っこぁ
「ようじーん」(用心)
って、これまだ地鳴りするほどの大っきい屁ひったけど。
盗人ぁびっくりして、今度ぁわがられでしまったどて、逃げろがど思ったのも、

娘達の方見たば、何事もねぇように
「ヨイショ ヨイショ」と、餅つきだけど。

盗人ぁびっくりしながらも、やれやれど、ひと安心してまた、
ソロソロと戸開げで敷居まだいだ、その時一番バッチの娘こぁ
「ブデ ブデ ブデ ・・・・・・・・・・・」
って、天まで届くほど大っきい屁ひったけど。
盗人ぁびっくりしたのなんのって、あったもんでねぇけど。

「あぁ、やっぱり俺ゃ来てだ事わがってえだんだ」ど思って、
何にも盗らねぇで逃げるど思ったのも、
腰ぁぬげでしまって、すって、はって、やっと逃げで行ったけど。
とっぴんぱらりのぷー。

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 本間智佐子さん

なのはじろうっこ

昔、なのはじろうっこという、じさどばっぱどえだけど。
二人は、柴切って町さ売りに行って、暮らしてえだけど。

ある時、じさ、町さ柴売りに行くどて、橋のたもとまできたば、
「なんだ、なのはじろうっこ、弱やなや」というおどするおだけど。
なんだ、俺の名前言うおだどて橋の下みだば、ネズミだ相撲とりだけど。

痩せたネズミが、とっては投げられ、とっては投げられしてるけど。
太いネズミが「なのはじろうっこ弱やなや」とまだ言ったけど。
「んだべた、俺家には何も食うものねあおの」と言ったけど。

それを聞いて「これなば町さ行って、買って来て食へねね」と言って、
町さ行って、いっぺ買って来て、梁の上さあげでおいだけど。

夜間になって、じさどばっぱど寝でだば、チュチュチュチュと食う音するけど。
じさどばっぱど、食う音する、食う音するど言って寝だけど。

次の日、まだ山さ行って、木切って、町さ売りにいぐどて、橋さ行ったば
「なんだて、今日のなのはじろうっこ強えなや」と言うけど。
したば、「んだべた、俺家のじさ、町さ行って、えっぺあごっつぉ買って来てけだけおん、
それ食ってだ」と言って、「晩げな俺家さみんな食いこえ」と言ったけど。
じさ困って、わらわらど町さ行って買って来て、梁の上さおいだけど。

まだ、じさどばっぱど寝でだば、あちからチュチュチュチュ、こちからチュチュチュチュと
ネズミが集まる音して、ガヤガヤど食う音するけど。

朝方になったば、なんだがガラガラという音がして、
じさの家の前さ来て、ドサッドサッと置ぐ音するけど。
朝間になって起ぎでみだば、じさの家の前さ、米っこなだが、味噌っこなだが、
魚っこなだが、 いっぺあ置いでえだっけど。

正月くるどごで、ええ正月したけど。

とっぴんぱらりのぷー。

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備前ムツさん

 

だんご だんご

昔、むかし、ばっぱと太郎というわらし、えだけど。
おどもあばも、外さ稼ぎに行ったなで、ばっぱえどごろかだづげだり、
掃いだりしていだどごさ、太郎来てばっぱなの腰や足もどさ、なっつぁがって来るなで、
「なんたて、せわしねぇたらなあ太郎。びゃっこ隣のばっぱさ遊びにえてこえ」っていったら、
さぁ、その太郎喜んで、えがったどて隣のばっぱさ行ったげど。

「ばっぱあ、ばっぱあ、遊びに来た」って言ったら、
「あやあや太郎、えぐきたな。まず、ひゃてこえ、ひゃてこえ」とばっぱの声したけど。
太郎ひゃてえたら、「太郎来るがどて、まぢでえだだよ。これ食え」と言って
「だんご」こしゃだな食わせだけど。
したば太郎、「んみゃんみゃ」ってむしゃむしゃど食ったけど。

「おらも家さ行って、ばっぱがらこしゃでもらって食う。なんていうものだべ、ばっぱ。」と太郎が聞いたら、
「だんごっていうもんだ、太郎。」っておせだけど。

みんなだんご食いあげだおんだがら、「だんご、だんご、だんご」って、
わえのばっぱがらこしゃでもらって食べでど思って、忘れねように言いながら出はってきたけど。

隣とわえの間にせぎがあって、そのせぎまだがねで回り道して歩ぐなだ。ほんとはな。
早ぐ家さえて、「ばっぱがらだんごこしゃでもらって食べ。」ど思って、
「だんご、だんご、だんご」って言って来て、
せぎまだぐ、その時、「せんとこ」って言ってしまたけど。
それで、こんだな、「せんとこ せんこと」って家さひゃてえて、

「ばっぱ、せんとここしゃで食せれ」「何でが太郎、せんとこってなえだ。ばっぱわがらね」
「せんとこよばっぱ、隣のばっぱこしゃで食しぇだなうめぇけ」って言ってだけど。

三尺の四角いろりの上のカギ縄さたごじで、ぶらぶらしながら、大きい声で、
「ばっぱぁ、せんとここしゃで食わせろー」って、せがんでいるうちに、手が離れで、
いろりの向こうさいる、ばっぱのなじぎさ「ばしーん」とカネのカギぁぶつかったど。

ばっぱ、「あやぁいでで太郎や、なじぎさだんごのようなこぶでぎだ」と言ったけど。
「あーあ、んだんだ、ばっぱ、だんごだ。だんごこしゃで食わせろ」
とっぴんぱらりのぷー。
jun1
鈴木ジュン子さん

   和尚さんと小僧(あめた風)

昔々、ある所に和尚さんと小僧さんがえだっけど。
二人はたいそう仲良く暮らしてえだっけど。

毎年、冬の一番寒いどぎねらって、必ず大きな袋こしゃで、「寒風」をいっぺぇ、その袋さ詰めでおぐなだけど。

そして、夏の暑い日は、和尚さんは近くのお墓にお経をあげで帰ってくるど、
必ず「ああ あっちあっち~」と言いながら、一人で袋がら、冷やっこい風っこあでで、涼んでえだっけど。
風っここしゃるどぎゃ、二人でやったけて、あっちいとぎゃ、一人で涼んで、
小僧さんさは「おめぇも一回涼んでみろ。」とは、言わねっけぞん。

ある時、小僧さんは、和尚さんが仕事で、少し遠くさ出がげだ。
この時ばかりと、「おれも一回涼んでみるべー」と、風の袋あげで、風っこあでで見だけど。
あまり気持ぢこええくて、ぐっすり眠ってしまったけど。

目がさめでみたば、夕方になってだけど。したば、風の袋はみな空っぽになってだけど。
びっくりして、なんとかして袋を膨らましておがねば、和尚さんにおごられる。
さぁー困った。
小僧さんは、へっぴり上手で、ケッツ天さむげで、風っこ吸って、
袋の口さケッツあでがって、ブブー ビビー ビー ビー と、何回もやって、
やっと和尚さんが来ねぇうぢ、袋さえっぺぇにふくらませでおえだけど。

和尚さんは、暑い、暑いと言いながら帰ってきたけど。
そして、いつも通り袋がら、風っこ出してえだば、
「あららーっ、今年みだいなごどねぇんだ。寒風もあめで、屁くせぇぐなったなや。」
と、独りごと言ってだけど。

小僧は、ふぎだすほどおがしがったが、がまんして笑わねぇでいだけど。

錦サラサラ、五葉の松原 とっぴんぱらりの下のたんこのびぃー。

take
福地タケ子さん